GEIENDO芸苑道
インバウンド成功事例Tourism NI's Music Experience Development Programme

伝統音楽を、
旅の体験に

公開 更新 文・細川明日香(株式会社芸苑道 代表)読了 約7分
伝統音楽を、旅の体験に——北アイルランド観光局が10の音楽体験を開発、ベルファストでの全アイルランド伝統音楽祭2026を一過性にしない仕組み
ANSWER

北アイルランド観光局(Tourism NI)は2026年10月初め、観光事業者と共同で開発した10の伝統音楽の体験を公開しました。2026年8月2〜9日にベルファストで初めて開かれた全アイルランド伝統音楽祭(Fleadh Cheoil na hÉireann)に合わせて2月に始めた「音楽体験開発プログラム」の成果で、大きな催しの効果を一過性にせず、開催都市以外の地域や、催しのない時期にも広げることをねらっています。観光局は、音楽祭の経済効果を6,000万ポンドを超えると見積もっています。

このテーマの全体像はこちら旅行者の行動を変える海外の仕組み|パラオ・アイスランド・コペンハーゲン・ハワイの事例

Overview北アイルランドでは、何が行われたのか

北アイルランド観光局は2026年2月、観光事業者が伝統音楽を生かした体験を開発するための「Music Experience Development Programme(音楽体験開発プログラム)」を始めました[2]。きっかけは、同年8月にベルファストで開かれる全アイルランド伝統音楽祭「Fleadh Cheoil na hÉireann」です。この音楽祭は、アイルランドの伝統音楽・歌・踊り・文化の祭典としては世界最大とされています[3]。

音楽祭から数週間後の2026年10月初め、プログラムに参加した事業者による10の音楽体験がベルファストで発表されました。観光局は、訪れる人を増やし、滞在を延ばし、より広く巡り、再び訪れてもらうことをねらいとして挙げ、国内外の市場に向けた体験と位置づけています[1]。

本記事は、北アイルランド観光局と関係機関の公表情報、および現地の報道の要約です。芸苑道と各団体との提携関係はありません。

How It Works大きな催しを、どのように通年の体験につなげたのか

流れを4つの段階に分けて整理しました。タブを切り替えてご覧ください。

2026年8月2〜9日:全アイルランド伝統音楽祭

アイルランドの伝統音楽・歌・踊り・言語の祭典「Fleadh Cheoil na hÉireann」が、2026年に初めてベルファストで開かれました。主催はアイルランド伝統音楽の団体Comhaltas Ceoltóirí Éireannで、ベルファスト市議会などと連携しています[4][5]。

音楽祭そのものについて、観光局は経済効果を6,000万ポンド超と見積もり、数千人の演奏家・歌い手・踊り手が世界各地から参加したとしています[3]。開催前、ベルファスト市議会は80万人を超える来場を見込んでいましたが[4]、市議会は閉幕後、会期中(8月2〜9日)の市中心部の通行量が165万3,999人と、当初の見込みの2倍を超えたと発表しています[5]。

The Ten Experiencesどのような音楽体験が生まれたのか

発表された10の体験は次のとおりです[1]。名称からも、演奏を聴く、楽器を習う、土地の物語や食と組み合わせるなど、さまざまな形があることがうかがえます。

体験の名称場所
Harp by the Foyleグレイスティール
Hooley in the Hen Houseスワトラ
Belfast Music Storiesベルファスト(Harrison Chambers of Distinction)
Feadóg sa Culturlann(ティンホイッスル)文化センター「Cultúrlann」
Bodhrán sa Culturlann(バウロン=枠太鼓)文化センター「Cultúrlann」
Songs and Stories of Carrickfergusキャリクファーガス
Here's to the Craic and Ceolベルファスト
Burgers and Bagpipesグルームズポート
Sing it Back Homeダウン州・アーマー州
Echo of the Glensバリーキャッスル

出典:Northern Ireland Chamber of Commerce掲載のTourism NIの発表(2026年10月)[1]。各体験の詳しい内容・料金は公表資料に記載がないため、省略しています。

観光局は、北アイルランド各地の音楽体験や催しをまとめて紹介する専用のページも新たに設けました[1]。

Lessonsこの取り組みの、どこが参考になるのか

  • 催しを「きっかけ」として使う:大きな音楽祭の開催を、観光事業者が体験を開発する期限と目標にしています[1][2]。
  • 開催都市の外にも広げる:10の体験の多くはベルファスト以外の町にあり、催しの効果を地域全体に届けることが意図されています[1]。
  • 担い手と訪れる人をつなぐ:観光局の担当者は、音楽の担い手と訪れる人がつながることを重視していると述べています[2]。
  • 観光局が開発を支える:個々の事業者に任せきりにせず、観光局がプログラムとして開発を後押しし、発信の場もまとめています[1]。

州の観光局が伝統文化の担い手に資金を出すハワイの例はハワイ「Kūkulu Ola」の仕組みで、宿泊税の一部を文化に充てる英国の例は英国初「ビジター・レビー」の仕組みで紹介しています。

Our Proposal芸苑道からの提案:催しのあとも続く、音の体験を

ここからは、芸苑道が宿泊施設の皆さまにお伝えしたい内容です。

1.地域の行事と、館内の催しをつなぐ

日本各地にも、祭りや芸能の催しがあります。その時期に合わせて館内で関連の演目をお届けし、催しのない時期にも同じ演目を続けてご紹介することで、お客様が一年を通じて土地の文化にふれられると私たちは考えています。

2.聴くだけでなく、ふれる時間を

北アイルランドでは、楽器を習う体験も生まれています。箏や三味線、篠笛なども、短い時間であれば楽器にふれていただく形でご用意できます。お客様の人数や空間の広さに合わせて、無理のない内容をご提案いたします。

3.近隣の施設とともに

一軒の宿だけで続けるのが難しい場合は、近隣の施設と時間帯や演目を分け合う形もございます。演目の選定・空間の設え・進行の設計まで、講師1名あたり¥88,000〜を目安にご相談を承っております。

Ask Us貴施設に置き換えると

ここまでは、公開されている資料にもとづく事実の整理です。実際に何をどのように組み立てるかは、貴施設の規模・立地・客層・繁閑の形によって変わります。芸苑道では、次のような点を伺ったうえで、貴施設に合う形をご提案しております。

  • 問大きな催しの時期だけでなく、年間を通じて文化体験をご用意できるか季節や曜日に合わせて、無理なく続けられる催しの組み立てをご提案いたします。
  • 問近隣の宿や事業者と、地域の芸能を共同でお届けできるか複数の施設で演目や時間帯を分け合う形について、ご相談を承っております。
  • 問演奏を聴くだけでなく、お客様に楽器にふれていただけるか短い体験の時間を含めた進行と、必要な広さや準備についてお伝えいたします。

ご状況を伺ったうえで、実施できる形かどうかを率直にお伝えいたします。芸苑道へご相談はこちら →

FAQよくある質問

北アイルランド観光局の「音楽体験開発プログラム」とは何ですか?

観光事業者が伝統音楽を生かした体験を開発するために、北アイルランド観光局が2026年2月に始めたプログラムです。2026年10月に10の体験が公開されました。

きっかけになった音楽祭は何ですか?

全アイルランド伝統音楽祭「Fleadh Cheoil na hÉireann」です。2026年8月2〜9日に初めてベルファストで開かれ、2027年もベルファストで開かれます。

音楽祭の経済効果はどのくらいですか?

北アイルランド観光局は、6,000万ポンドを超える経済効果があったと見積もっています。

Sources & References出典・参考文献

  1. Northern Ireland Chamber of Commerce "Tourism NI launches 10 new music experiences – as legacy of Fleadh Cheoil na hÉireann continues" 2026年10月 https://www.northernirelandchamber.com/member-news/tourism-ni-launches-10-new-music-experiences-as-legacy-of-fleadh-cheoil-na-heireann-continues/
  2. Business Eye "Tourism NI Launches Music Development Programme Ahead Of Fleadh Cheoil na hÉireann" 2026年2月2日 https://www.businesseye.co.uk/news/tourism-ni-launches-music-development-programme-ahead-of-fleadh-cheoil-na-heireann/
  3. Tourism NI "Fleadh Cheoil na hÉireann - Belfast 2026 & 2027" https://www.tourismni.com/business-guidance/opportunities-campaigns/fleadh-cheoil-na-heireann-belfast-2026/
  4. Belfast City Council "Fleadh Cheoil na hÉireann to return to Belfast in 2027" https://www.belfastcity.gov.uk/news/fleadh-cheoil-na-heireann-to-return-to-belfast-in
  5. Belfast City Council "An Un-Fleadh-gettable week in Belfast as city centre footfall reaches 1.65 million" 2026年8月10日 https://www.belfastcity.gov.uk/news/an-un-fleadh-gettable-week-in-belfast-as-city-cent

本記事は、公的機関・国際機関・学術論文などの公開情報をもとに作成しています(確認日:2026年10月9日)。数値や制度は改定されることがあるため、最新の情報は各出典の公式発表をご確認ください。

WRITTEN BY

細川 明日香

株式会社芸苑道 代表取締役。箏・三味線奏者。東京藝術大学 修士課程修了、日本当道会 師範。伝統芸能の実演家として、訪日のお客様に向けた文化体験を企画しております。著者プロフィール 個人サイト