The Studyどんな研究?英語で回答した欧米豪・中南米の人々への2つの調査
この論文は、石井隆太氏、丸山雄大氏、菊盛真衣氏(立命館大学)と、ゴック・ルー氏(英国サセックス大学)によるもので、日本マーケティング学会の学術誌『マーケティングジャーナル』46巻3号(2026年6月30日発行、早期公開は6月18日)に掲載されました[1]。
国のイメージを「温かさ(親しみやすさ、親切さなど)」と「有能さ(技術の高さ、インフラやサービスの整い方など)」の2つの軸でとらえる「ステレオタイプ内容モデル」にもとづき、2つの調査を行っています[1]。
- 調査1:米国・オーストラリア・フランス・スウェーデンの各国約100人、計401人(オンライン調査、英語で回答)。うち訪日経験のある人は107人(26.7%)
- 調査2:英国96人とメキシコ80人の計176人。先進国市場と新興国市場の比較
Effect of Visiting日本はどう見られている?「有能さ」が高く、「温かさ」は訪日経験で上がる
訪日経験のない人(294人)では、温かさ4.95に対して有能さ5.99と、有能さの評価が大きく上回りました。
出典:Ishii, Maruyama, Luu, & Kikumori (2026), Quarterly Journal of Marketing 46(3) の調査1
調査1では、回答者全体として、日本は「温かい国」よりも「有能な国」として強く認識されていました。論文は、日本が人の親切さや温かさよりも、技術が進み利便性の高い国として見られていると述べています[1]。
訪日経験のある人は、温かさと有能さの両方で評価が高く、特に温かさの差(0.64)は統計的に有意でした。有能さの差(0.25)は有意ではありませんでした。実際に日本を訪れることで、人の親切さや社会の雰囲気が伝わると解釈されています[1]。
UK vs Mexico英国とメキシコで違いは?英国は「温かさ」、メキシコは「有能さ」
調査2で、日本のイメージが訪日意向にどう結びつくかを国別に分析すると、次のような違いが見られました[1]。
| 訪日意向への影響(標準化係数) | 英国 | メキシコ |
|---|---|---|
| 温かさ → 訪日意向 | 0.41(有意) | 0.14 |
| 有能さ → 訪日意向 | 0.07 | 0.48(有意) |
論文は、先進国市場では親切さ、地域の人との交流、ホスピタリティ、文化体験など「人」に焦点を当てた訴求を、新興国市場では交通の信頼性、清潔さ、サービスの質など安全・便利さに焦点を当てた訴求を行うことを、実務への示唆として挙げています[1]。
なお、調査2は1つの先進国と1つの新興国のみを対象とし、標本も小さいため、論文自身も一般化には限界があるとしています。また、英語で回答できる人に限ったオンライン調査である点にも留意が必要です[1]。
Our Proposal芸苑道からの提案:『有能な日本』の先に、人の温かさを
ここからは、芸苑道が宿泊施設の皆さまにお伝えしたい内容です。
1.欧米のお客様は、『温かさ』を確かめに来られる
この研究では、英国の回答者にとって、日本の温かさが訪日意向により強く結びついていました。設備やサービスの確かさに加えて、人と人とが向き合う時間をお届けすることが、欧米のお客様の期待に沿う一つの方法と考えられます。
2.演奏家と言葉を交わす時間を
伝統芸能の演奏は、演奏家がお客様の目の前で楽器を奏で、曲の背景を語る、人の顔が見える体験です。演奏のあとに楽器に触れていただく時間を設けるなど、交流の場面も含めて進行をご提案いたします(講師1名あたり¥88,000〜)。
3.市場に合わせて、伝え方を変える
同じ体験でも、お客様の国・地域によって響く言葉は異なります。ご案内文やご紹介の仕方についても、ご相談を承っております。
Ask Us貴施設に置き換えると
ここまでは、公開されている資料にもとづく事実の整理です。実際に何をどのように組み立てるかは、貴施設の規模・立地・客層・繁閑の形によって変わります。芸苑道では、次のような点を伺ったうえで、貴施設に合う形をご提案しております。
- 問欧米のお客様に、貴施設の『温かさ』をどう伝えるか人と人との交流が感じられる体験の形を、貴施設に合わせてご提案いたします。
- 問初めて日本を訪れるお客様に、何を印象に残すか短い時間でも人の顔が見える演奏の進め方を、ご一緒に考えます。
- 問市場ごとに、案内や紹介の言葉を変えるべきかお客様の国・地域に合わせた体験の紹介の仕方について、ご相談を承っております。
ご状況を伺ったうえで、実施できる形かどうかを率直にお伝えいたします。芸苑道へご相談はこちら →
FAQよくある質問
この研究は、いつ、どこで発表されましたか?
日本マーケティング学会の学術誌『マーケティングジャーナル』46巻3号(2026年6月30日発行)に掲載されました。著者は石井隆太氏、丸山雄大氏、菊盛真衣氏(立命館大学)とゴック・ルー氏(英国サセックス大学)です。
海外の人は、日本をどう見ていましたか?
米国・オーストラリア・フランス・スウェーデンの401人の調査では、日本は「温かさ」より「有能さ」で高く評価されていました(訪日経験なしの人で温かさ4.95、有能さ5.99、7段階)。
訪日経験によって、評価は変わりましたか?
訪日経験のある人は温かさの評価が5.59と高く、訪日経験のない人との差(0.64)は統計的に有意でした。有能さの差は有意ではありませんでした。
Sources & References出典・参考文献
- 石井隆太・丸山雄大・ルー ゴック・菊盛真衣「カントリーステレオタイプにおける温かさと有能さ——訪日意図の国際比較分析——」マーケティングジャーナル 46(3), 265-276, 2026年 https://doi.org/10.7222/marketing.2026.040
- 小野晃典「巻頭言 インバウンド観光の心理と行動の新展開——多文化環境下の知覚・意思決定・満足——」マーケティングジャーナル 46(3), 227-230, 2026年 https://doi.org/10.7222/marketing.2026.042
本記事は、公的機関・国際機関・学術論文などの公開情報をもとに作成しています(確認日:2026年10月12日)。数値や制度は改定されることがあるため、最新の情報は各出典の公式発表をご確認ください。
