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調査・研究レポート完全ガイドAuthenticity in Tourism Research

観光の「本物らしさ」は誰が決める?
真正性研究の3つの理論

公開 更新 文・細川明日香(株式会社芸苑道 代表)読了 約7分
観光の「本物らしさ」は誰が決める?真正性研究の3つの理論【MacCannell・Cohen・Wang】
ANSWER

観光研究でいう「真正性(authenticity)」とは、旅行者が体験を「本物だ」と感じるかどうかをめぐる議論です。MacCannell(1973)は観光地が「舞台裏」を演出すると指摘し、Cohen(1988)は本物らしさは旅行者によって変わる交渉可能なものだと論じ、Wang(1999)は旅行者自身が「本来の自分」を感じる実存的真正性という考え方を示しました。

Why It Mattersなぜ「本物らしさ」が問題になるのか

文化体験を商品として提供すると、「観光客向けに作られたものは本物ではないのでは」という問いが必ず生まれます。伝統芸能の体験を企画するときにも、この問いは避けて通れません。

観光研究では、この問題が1970年代から議論されてきました。ここでは、特に多く引用されてきた3本の論文を紹介します。

Three Theories3つの代表的な理論

STAGED AUTHENTICITY / 演出された真正性

Dean MacCannell(1973)

社会学者ゴッフマンの「表舞台/舞台裏」の区別を使い、旅行者は親密さや本物の体験を求めて、訪れた土地の「舞台裏」に入ろうとすると論じました。一方で観光地は、実際にはそうでなくても「舞台裏に入った」と感じさせるように演出される、と指摘しています。

掲載誌
American Journal of Sociology, 79(3), 589–603

各論文の内容は、原著および要旨をもとに当メディアが要約したものです。

Comparison3つの理論の違い

理論「本物」の基準はどこにあるか伝統芸能体験での問い
演出された真正性見せる側が演出する「舞台裏」お客様に見せる「楽屋」は演出になっていないか
交渉可能な真正性旅行者が求める体験の種類によって変わるお客様はどのくらいの「本格さ」を求めているか
実存的真正性体験する旅行者自身の感覚お客様ご自身が「心から楽しめた」と感じたか

Implications伝統芸能の体験づくりへの示唆

ここからは、研究をふまえた芸苑道の見方です。

  • 「本物の担い手」であることは出発点。実演家が伝統を受け継いでいることは、体験の土台になります。
  • ただし、本物らしさはそれだけでは決まらない。Cohenが示すように、お客様が求める「本格さ」の度合いは人によって違います。事前に期待を聞き取ることが大切です。
  • お客様ご自身の体験を設計する。Wangの実存的真正性の視点に立つと、お客様ご自身の手で音を出す、演奏家と言葉を交わすといった「自分ごとになる瞬間」が、体験の価値を左右すると考えられます。
RELATED RESEARCHWelcome to the Experience Economy体験そのものを価値とみなす「経験経済」の理論は、このカテゴリの記事で解説しています。

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ここまでは、公開されている資料にもとづく事実の整理です。実際に何をどのように組み立てるかは、貴施設の規模・立地・客層・繁閑の形によって変わります。芸苑道では、次のような点を伺ったうえで、貴施設に合う形をご提案しております。

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Glossaryこの記事に出てくる用語

用語意味
真正性(観光研究)しんせいせい観光研究で、旅行者が体験や対象を「本物だ」と感じるかどうかをめぐる概念。MacCannell(1973)の「演出された真正性」、Cohen(1988)の「交渉可能な真正性」、Wang(1999)の「実存的真正性」が代表的な議論です。
経験経済けいけんけいざい経済価値が「コモディティ → 製品 → サービス → 経験」と進化し、記憶に残る体験そのものが対価を得る商品になるという考え方。B・ジョセフ・パインとジェームス・ギルモアが1998年にHarvard Business Reviewで提唱しました。
それぞれの語をクリックすると、出典つきの詳しい解説をご覧いただけます。

FAQよくある質問

観光における「真正性」とは何ですか?

旅行者が観光の体験や対象を「本物だ」と感じるかどうかをめぐる概念です。1970年代から観光研究の中心的なテーマの一つになっています。

演出された真正性(staged authenticity)とは?

MacCannell(1973)が示した考え方で、観光地は旅行者が「舞台裏に入った」と感じるように演出されている、という指摘です。

実存的真正性とは?

Wang(1999)が提案した考え方で、対象が本物かどうかに関わらず、旅行者自身が観光の活動を通じて「本来の自分」を感じる真正性を指します。

Sources & References出典・参考文献

  1. MacCannell, D. (1973). Staged authenticity: Arrangements of social space in tourist settings. American Journal of Sociology, 79(3), 589–603. https://doi.org/10.1086/225585
  2. Cohen, E. (1988). Authenticity and commoditization in tourism. Annals of Tourism Research, 15(3), 371–386. https://doi.org/10.1016/0160-7383(88)90028-X
  3. Wang, N. (1999). Rethinking authenticity in tourism experience. Annals of Tourism Research, 26(2), 349–370. https://doi.org/10.1016/S0160-7383(98)00103-0

本記事は、公的機関・国際機関・学術論文などの公開情報をもとに作成しています(確認日:2026年9月17日)。数値や制度は改定されることがあるため、最新の情報は各出典の公式発表をご確認ください。論文の内容は当メディアによる要約です。正確な内容は原著をご確認ください。

WRITTEN BY

細川 明日香

株式会社芸苑道 代表取締役。箏・三味線奏者。東京藝術大学 修士課程修了、日本当道会 師範。伝統芸能の実演家として、訪日のお客様に向けた文化体験を企画しております。著者プロフィール 個人サイト