2016: The First Fukko-wari「ふっこう割」は、いつ、なぜ始まったのか
2016年4月16日に発生した熊本地震では、75万泊もの宿泊キャンセルが生じました。政府は、風評被害を減らし観光客の早期回復を図るため、初めて個人旅行に対する助成制度として「九州観光支援のための割引付旅行プラン助成金制度」(ふっこう割)を設けました[1]。
論文によると、2016年5月17日に成立した補正予算のうち約7,000億円が「熊本地震復旧等予備費」とされ、5月31日の「九州の観光復興に向けての総合支援プログラム」の一つとして、予備費から180億円のふっこう割が導入されました。割引は7〜9月(第I期)と10〜12月(第II期)に九州7県を旅行した人を対象とし、最大で7割の割引が行われました[1]。
上限は、宿泊のみで1予約あたり最大2万円、交通付きの1泊2日が2万円、2泊3日が3万円、周遊型が3.5万円とされました。九州観光推進機構によると、ふっこう割を使った宿泊は約271万泊(7〜9月約149万泊、10〜12月約122万泊)でした[1]。
被害の大きかった熊本・大分は、7〜9月の最大割引率が70%でした(平均割引率は50%)。
出典:松下哲明(2019)「熊本地震における復興支援策『ふっこう割』が観光客の回復過程に及ぼした影響」土木学会論文集D3、表-1をもとに作成
Timeline年表で見る、ふっこう割の10年
ボタンで時代を絞り込めます。
- 2016平成28年4月熊本地震
4月16日に発生。論文によると、宿泊のキャンセルは75万泊にのぼりました。
- 2016平成28年7月〜12月九州ふっこう割
熊本地震復旧等予備費から180億円。個人旅行への助成は初めてとされ、利用は約271万泊でした。
- 2016平成28年10月鳥取ふっこう割
10月21日の鳥取県中部地震でも、個人旅行への助成が行われました。
- 2018平成30年10月〜北海道ふっこう割
胆振東部地震を受け、国費81億円(予備費)。外国人旅行者の補助率を高くし、最大70%割引としました。
- 2024令和6年3月〜北陸応援割
能登半島地震を受け、北陸4県で実施。国内旅行者に加え、訪日旅行者も対象でした。
- 2026令和8年10月〜九州ふっこう応援割
7月28日の令和8年熊本地震を受け、九州7県で実施。割引率50%(熊本・鹿児島は60%)。
出典:松下(2019)土木学会論文集D3、北海道「北海道観光復興キャンペーン」資料(2018年9月28日)、観光庁「令和6年1月能登半島地震」「九州ふっこう応援割」をもとに作成
What Changed10年で、何が変わり、何が変わらなかったのか
変わらなかったこと:上限額の枠組み
2016年の九州ふっこう割の上限(1泊2万円、2泊以上3万円、周遊3.5万円)[1]は、2024年の北陸応援割(宿泊単体1泊2万円、交通付き2泊以上3万円、宿泊地が2県以上3.5万円)[4]、2026年の九州ふっこう応援割(1泊2.0万円、2泊以上3.0万円、周遊3.5万円)[5]とほぼ同じです。日帰りではなく泊まりの旅行を支えるという考え方も共通しています。
変わったこと:海外からの旅行者への目配り
2018年の北海道ふっこう割は、第2弾で外国人旅行客への補助率を高く設定(最大70%割引)し、日本人は1人3泊、外国人は1人5泊まで支援するとしました。第2弾では海外の旅行予約サイトや旅行会社、宿泊施設による割引も行うとしていました[2]。2024年の北陸応援割も、国内旅行者はもとより訪日旅行者も対象とした割引でした[3]。
効果はどう評価されたか
2016年のふっこう割を分析した論文は、九州各県の宿泊統計から、熊本県と大分県は同じ割引率だったにもかかわらず、熊本県は大分県より観光客の増加が少なかったと報告しています。観光資源や宿泊施設、道路網の被害の有無が要因として考えられるとし、熊本・大分以外では、回復の傾向を大きく変えるほどの影響は認められなかったとしています[1]。割引の効果は、被害の状況や交通の回復と切り離せないことがうかがえます。
2026年の制度の詳細は九州ふっこう応援割とは?で、訪日客が前年を下回った年の歴史は訪日客が前年を下回った年で紹介しています。
Our Proposal芸苑道からの提案:割引のあとに残る「滞在の記憶」を
ここからは、芸苑道が宿泊施設の皆さまにお伝えしたい内容です。
1.割引は入口、記憶に残るのは滞在の中身
2016年の研究は、同じ割引率でも、観光資源や交通の状況によって回復の度合いが異なったことを示していました。割引は旅に出るきっかけになりますが、お客様が次も選んでくださるかどうかは、滞在そのものの印象に左右されると私たちは考えています。
2.「応援の旅」に応えるおもてなし
災害のあとに訪れるお客様の中には、その土地を応援したいという思いをお持ちの方もいらっしゃいます。地域の歴史や季節を映した曲を、実演家の言葉を添えてお届けすることは、その思いに応えるひとつの形です。
3.海外のお客様にも、安心と楽しみを
2018年と2024年の制度は、訪日旅行者も対象としていました。海外のお客様には、短い英語の解説を添えた演奏で、日本の文化に触れる時間をご用意できます。演目の選定・空間の設え・進行の設計まで、講師1名あたり¥88,000〜を目安にご相談を承っております。
Ask Us貴施設に置き換えると
ここまでは、公開されている資料にもとづく事実の整理です。実際に何をどのように組み立てるかは、貴施設の規模・立地・客層・繁閑の形によって変わります。芸苑道では、次のような点を伺ったうえで、貴施設に合う形をご提案しております。
- 問災害のあと、お客様にお戻りいただくために何ができるか割引の期間と合わせた館内の催しの組み立てを、ご一緒に考えます。
- 問割引の終了後も選ばれる宿であるには季節ごとに変化をつけた演奏で、再訪のきっかけをつくる方法をご提案いたします。
- 問海外のお客様に、安心して訪れていただくには海外のお客様にも伝わる、短い英語の解説を添えた演奏をご用意いたします。
ご状況を伺ったうえで、実施できる形かどうかを率直にお伝えいたします。芸苑道へご相談はこちら →
FAQよくある質問
「ふっこう割」はいつ始まりましたか?
2016年の熊本地震を受けて、九州観光支援のための割引付旅行プラン助成制度として初めて導入されました。熊本地震復旧等予備費から180億円が充てられ、2016年7〜12月に約271万泊に利用されました。
過去のふっこう割は訪日外国人も対象でしたか?
2018年の北海道ふっこう割では、外国人旅行客への補助率を高く設定し最大70%割引とし、外国人は1人5泊まで支援しました。2024年の北陸応援割も訪日旅行者を対象に含めていました。
ふっこう割の効果はどう評価されていますか?
2016年の制度を分析した論文は、熊本県と大分県は同じ割引率だったものの熊本県の観光客の増加は大分県より少なかったと報告し、観光資源や宿泊施設、道路網の被害の有無が影響した可能性を指摘しています。
Sources & References出典・参考文献
- 松下哲明(2019)「熊本地震における復興支援策『ふっこう割』が観光客の回復過程に及ぼした影響」『土木学会論文集D3(土木計画学)』75巻1号、1-10頁 https://www.jstage.jst.go.jp/article/jscejipm/75/1/75_1/_article/-char/ja/
- 北海道「北海道観光復興キャンペーン ~元気です北海道~ の本格展開について」2018年9月28日 https://www.pref.hokkaido.lg.jp/fs/5/0/7/9/7/3/5/_/300928haifu-01.pdf
- 観光庁「令和6年1月能登半島地震」(北陸応援割【終了済み】) https://www.mlit.go.jp/kankocho/jishin_r6notohanto02.html
- 日本商工会議所「能登半島地震被災地の観光支援策『北陸応援割』の概要を発表(観光庁)」2024年2月21日 https://archive.jcci.or.jp/news/trend-box/2024/0221151650.html
- 観光庁「九州ふっこう応援割」(最終更新日:2026年10月9日) https://www.mlit.go.jp/kankocho/page13_00002.html
本記事は、公的機関・国際機関・学術論文などの公開情報をもとに作成しています(確認日:2026年10月10日)。数値や制度は改定されることがあるため、最新の情報は各出典の公式発表をご確認ください。
