Overview国家遺産ステイとは、どのような制度か
文化財の保護と活用を担う韓国の政府機関、国家遺産庁は、2026年9月8日、「国家遺産ステイ造成」と「国家遺産基盤 名所再生」の二つの事業を新たに始め、2027年の対象地を自治体の公募で選ぶと発表しました[1]。
発表は、これまでの国家遺産の活用が見学や一回限りの体験に偏っていたとし、今後は国家遺産そのものを旅の目的地であり宿泊の場にすることで、滞在時間を延ばし、地域での消費と体験を広げるとしています[1]。2026年2月25日の拡大国家観光戦略会議で発表された「韓国型パラドール 国家遺産ステイ育成」の後続事業と位置づけられています[1]。
手本とされたスペインのパラドールは、古い城や修道院など歴史的・文化的な価値を持つ建物を国が取得・改修して運営する国営ホテルのチェーンです[1]。パラドールの仕組みは歴史的建造物を宿にする——パラドールとポザーダで紹介しています。
How It Works何を、どのように支援するのか
タブを切り替えると、事業の内容、運営の仕組み、同時に始まる名所再生、選定の基準をご覧いただけます。
歴史性・場所性・希少性を備えた古宅(コテク)を、上質な宿泊と体験ができる滞在拠点に整える事業です[1]。
- 対象:国や広域自治体(市・道)が指定(登録)した古宅・宗宅のうち、国・自治体が所有するもの、または公共に委託されているもの。個人所有は対象外[1]。
- 規模:2027年に10か所程度を試行的に選定[1]。
- 支援:国費は総額51億ウォン。1か所あたり施設整備に約4億1千万ウォン、コンテンツの開発・運営に最大1億ウォン。国費と地方費は50対50[1]。
- 整備の内容:冷暖房、電気・消防、トイレ・シャワーなど宿泊に必要な設備を、遺産の原形を損なわない範囲で改善[1]。
施設の整備だけでなく、運営の仕組みまで一体で整えることが特徴とされています[1]。
- 統合ブランドと認証
- サービス・品質の管理
- 統合予約
- 運営者への教育・コンサルティング
- 共同のマーケティング
国家遺産庁は、個々の古宅を宿にするだけでなく、全国の国家遺産をつなぐ上質な滞在型観光のブランドへ段階的に育てるとしています[1]。
同時に始まる「国家遺産基盤 名所再生」は、遺産・商店街・住宅地を一本の歩行動線でつなぎ、地域全体を観光地として育てる事業です[1]。
- 韓屋の景観を生かして商店街がにぎわった慶州の皇理団通り(ファンリダンギル)のような変化を全国に広げることを目指し、2031年までに「第2の皇理団通り」を10か所つくる目標です[1]。
- 2027年は最初の試行事業として3地域を選びます[1]。
- 住民・商人・若者が、遺産の歴史や物語をもとに、滞在型・夜間の体験プログラム、地域の記念品や飲食の開発に参加する計画です[1]。
国家遺産ステイの審査では、次の点を総合的に見るとされています[1]。
- 国家遺産の価値(歴史性、場所性など)
- 施設の適合性(保存状態、改修の条件、安全性、アクセス)
- コンテンツの計画(独自性、地域の文化資源とのつながり)
- 運営の持続性(自治体の意思、運営主体の確保、住民参加)
日程は、2026年9月8日に公募を告示、9月15日に自治体向け説明会、10月12日〜28日に申請受付、11月に審査、12月初めに選定結果を発表する予定です[1]。
国費と地方費は50対50。国費の総額は51億ウォンです。
出典:韓国・国家遺産庁 報道資料(2026年9月8日)をもとに作成
What Stands Outこの仕組みの、どこが特徴なのか
- 「泊まる」ことを遺産活用の中心に置く:見学の場だった古宅を、宿泊と体験の場に変える発想です。遺産の歴史と、地域の食・無形遺産・伝統市場などを組み合わせた体験コンテンツも同時に開発するとしています[1]。
- 運営の仕組みを国がそろえる:建物の改修にとどまらず、ブランド、認証、品質管理、予約、運営者の教育までを一体で整える点は、個々の施設が単独で集客するのとは異なる方法です[1]。
- 原形を損なわない改修:冷暖房や水回りなどの設備は、遺産の原形を損なわない範囲で整えるとされています[1]。報道によると、木造の構造を変えずに設備を入れる方針です[2]。
- まちの回遊とセットで:同時に始まる名所再生事業で、宿だけでなく、周辺の商店街や路地を歩いて楽しめるまちづくりも進めます[1]。
韓国では、寺に泊まるテンプルステイも国の観光資源として育てられてきました。報道によると、国家遺産庁の許民(ホ・ミン)庁長は、遺産を「見る場所」から「泊まり、体験し、また訪れる場所」へ変える取り組みだと述べています[2]。
※ 本記事で紹介する機関・制度と芸苑道との間に、提携関係はありません。
Our Proposal芸苑道からの提案:建物の歴史に、音を重ねる
ここからは、芸苑道が宿泊施設の皆さまにお伝えしたい内容です。
1.歴史ある建物は、それ自体がお客様の旅の目的に
韓国の取り組みは、歴史ある建物に「泊まること」そのものを旅の目的にしようとしています。日本にも、古民家や登録有形文化財の建物を生かした宿が数多くあります。その建物が建てられた時代に親しまれた曲や、建物の様式に合う楽器をお選びすることで、空間の歴史をお客様に感じていただきやすくなると私たちは考えています。
2.木の空間と、生の楽器の響き
木造の座敷や土間は、箏や尺八の音がやわらかく響く空間です。マイクや大きな機材を使わず、建物を傷めない設営で演奏することもできます。演奏の位置やお客様の座る場所まで、現地を拝見したうえでご提案いたします。
3.「泊まる理由」を、建物と体験の組み合わせで
韓国の制度は、建物の改修と体験コンテンツの開発を一体で支援しています。貴施設でも、建物の由来をお伝えするご案内と、季節の演奏を組み合わせることで、ほかでは得がたい滞在をご用意できます。演目の選定・空間の設え・進行の設計まで、講師1名あたり¥88,000〜を目安にご相談を承っております。
Ask Us貴施設に置き換えると
ここまでは、公開されている資料にもとづく事実の整理です。実際に何をどのように組み立てるかは、貴施設の規模・立地・客層・繁閑の形によって変わります。芸苑道では、次のような点を伺ったうえで、貴施設に合う形をご提案しております。
- 問歴史ある建物や庭を、文化体験の場としてどう生かすか建物の様式や由来に合う演目と、音の響き方を踏まえた配置をご提案いたします。
- 問建物を傷めずに、演奏の時間を設けられるか設営の規模や機材を最小限にした形を、現地の条件から率直にご相談いたします。
- 問宿の物語を、お客様にどう伝えるか建物の歴史と曲の背景をつなぐ、ご紹介の言葉をご用意いたします。
ご状況を伺ったうえで、実施できる形かどうかを率直にお伝えいたします。芸苑道へご相談はこちら →
FAQよくある質問
韓国の「国家遺産ステイ」とは何ですか?
韓国の国家遺産庁が2026年9月に発表した事業で、歴史的な古宅を上質な宿泊と体験の拠点に整えるものです。スペインのパラドールを手本にした「韓国型パラドール」と位置づけられ、2027年に10か所程度を試行的に選びます。
どのような支援が行われますか?
国費は総額51億ウォンで、1か所あたり施設整備に約4億1千万ウォン、コンテンツの開発・運営に最大1億ウォンを支援します。国費と地方費は50対50です。統合ブランド、品質管理、統合予約、運営者の教育、共同マーケティングも一体で整えます。
どの建物が対象になりますか?
国や広域自治体(市・道)が指定(登録)した古宅・宗宅のうち、国・自治体が所有するもの、または公共に委託されているものが対象で、個人所有の建物は対象外です。自治体からの申請は2026年10月12日〜28日に受け付けます。
Sources & References出典・参考文献
- 韓国・国家遺産庁「国家遺産、滞在し楽しみ消費する新しい『活力拠点』へ」報道資料、2026年9月8日(大韓民国政策ブリーフィング掲載、韓国語) https://www.korea.kr/briefing/pressReleaseView.do?newsId=156780600
- The Korea Times「Turning historic houses into boutique hotels」2026年9月8日 https://www.koreatimes.co.kr/lifestyle/koreanheritage/20260908/turning-historic-houses-into-boutique-hotels
本記事は、公的機関・国際機関・学術論文などの公開情報をもとに作成しています(確認日:2026年10月10日)。数値や制度は改定されることがあるため、最新の情報は各出典の公式発表をご確認ください。
