GEIENDO芸苑道
インバウンド成功事例Korea’s National Heritage Stay: A Korean Take on the Paradores

歴史ある古宅を、
国の宿のブランドに

公開 更新 文・細川明日香(株式会社芸苑道 代表)読了 約7分
歴史ある古宅を、国の宿のブランドに——韓国・国家遺産庁「国家遺産ステイ」、スペインのパラドールを手本に2027年に10か所程度、1か所あたり施設約4億1千万ウォン・コンテンツ最大1億ウォン
ANSWER

韓国の国家遺産庁は2026年9月8日、歴史的な古宅(コテク)を上質な宿泊と体験の拠点にする「国家遺産ステイ」を新たに始めると発表しました。2026年2月の会議で示された「韓国型パラドール」の具体化で、2027年に10か所程度を試行的に選び、国費総額51億ウォン(1か所あたり施設整備約4億1千万ウォン、コンテンツ最大1億ウォン、国と地方で半分ずつ)を投じます。特徴は、建物の改修だけでなく、統合ブランド・認証、品質管理、統合予約、運営者の教育、共同マーケティングまで一体で整える点です。自治体からの申請は2026年10月12日〜28日、選定結果は12月初めに発表される予定です。

このテーマの全体像はこちら旅行者の行動を変える海外の仕組み|パラオ・アイスランド・コペンハーゲン・ハワイの事例

Overview国家遺産ステイとは、どのような制度か

文化財の保護と活用を担う韓国の政府機関、国家遺産庁は、2026年9月8日、「国家遺産ステイ造成」と「国家遺産基盤 名所再生」の二つの事業を新たに始め、2027年の対象地を自治体の公募で選ぶと発表しました[1]。

発表は、これまでの国家遺産の活用が見学や一回限りの体験に偏っていたとし、今後は国家遺産そのものを旅の目的地であり宿泊の場にすることで、滞在時間を延ばし、地域での消費と体験を広げるとしています[1]。2026年2月25日の拡大国家観光戦略会議で発表された「韓国型パラドール 国家遺産ステイ育成」の後続事業と位置づけられています[1]。

手本とされたスペインのパラドールは、古い城や修道院など歴史的・文化的な価値を持つ建物を国が取得・改修して運営する国営ホテルのチェーンです[1]。パラドールの仕組みは歴史的建造物を宿にする——パラドールとポザーダで紹介しています。

How It Works何を、どのように支援するのか

タブを切り替えると、事業の内容、運営の仕組み、同時に始まる名所再生、選定の基準をご覧いただけます。

歴史性・場所性・希少性を備えた古宅(コテク)を、上質な宿泊と体験ができる滞在拠点に整える事業です[1]。

  • 対象:国や広域自治体(市・道)が指定(登録)した古宅・宗宅のうち、国・自治体が所有するもの、または公共に委託されているもの。個人所有は対象外[1]。
  • 規模:2027年に10か所程度を試行的に選定[1]。
  • 支援:国費は総額51億ウォン。1か所あたり施設整備に約4億1千万ウォン、コンテンツの開発・運営に最大1億ウォン。国費と地方費は50対50[1]。
  • 整備の内容:冷暖房、電気・消防、トイレ・シャワーなど宿泊に必要な設備を、遺産の原形を損なわない範囲で改善[1]。
国家遺産ステイの支援額(1か所あたり・国費)
  • 施設整備約4億1千万ウォン
  • コンテンツの開発・運営最大1億ウォン

国費と地方費は50対50。国費の総額は51億ウォンです。

出典:韓国・国家遺産庁 報道資料(2026年9月8日)をもとに作成

What Stands Outこの仕組みの、どこが特徴なのか

  • 「泊まる」ことを遺産活用の中心に置く:見学の場だった古宅を、宿泊と体験の場に変える発想です。遺産の歴史と、地域の食・無形遺産・伝統市場などを組み合わせた体験コンテンツも同時に開発するとしています[1]。
  • 運営の仕組みを国がそろえる:建物の改修にとどまらず、ブランド、認証、品質管理、予約、運営者の教育までを一体で整える点は、個々の施設が単独で集客するのとは異なる方法です[1]。
  • 原形を損なわない改修:冷暖房や水回りなどの設備は、遺産の原形を損なわない範囲で整えるとされています[1]。報道によると、木造の構造を変えずに設備を入れる方針です[2]。
  • まちの回遊とセットで:同時に始まる名所再生事業で、宿だけでなく、周辺の商店街や路地を歩いて楽しめるまちづくりも進めます[1]。

韓国では、寺に泊まるテンプルステイも国の観光資源として育てられてきました。報道によると、国家遺産庁の許民(ホ・ミン)庁長は、遺産を「見る場所」から「泊まり、体験し、また訪れる場所」へ変える取り組みだと述べています[2]。

※ 本記事で紹介する機関・制度と芸苑道との間に、提携関係はありません。

Our Proposal芸苑道からの提案:建物の歴史に、音を重ねる

ここからは、芸苑道が宿泊施設の皆さまにお伝えしたい内容です。

1.歴史ある建物は、それ自体がお客様の旅の目的に

韓国の取り組みは、歴史ある建物に「泊まること」そのものを旅の目的にしようとしています。日本にも、古民家や登録有形文化財の建物を生かした宿が数多くあります。その建物が建てられた時代に親しまれた曲や、建物の様式に合う楽器をお選びすることで、空間の歴史をお客様に感じていただきやすくなると私たちは考えています。

2.木の空間と、生の楽器の響き

木造の座敷や土間は、箏や尺八の音がやわらかく響く空間です。マイクや大きな機材を使わず、建物を傷めない設営で演奏することもできます。演奏の位置やお客様の座る場所まで、現地を拝見したうえでご提案いたします。

3.「泊まる理由」を、建物と体験の組み合わせで

韓国の制度は、建物の改修と体験コンテンツの開発を一体で支援しています。貴施設でも、建物の由来をお伝えするご案内と、季節の演奏を組み合わせることで、ほかでは得がたい滞在をご用意できます。演目の選定・空間の設え・進行の設計まで、講師1名あたり¥88,000〜を目安にご相談を承っております。

Ask Us貴施設に置き換えると

ここまでは、公開されている資料にもとづく事実の整理です。実際に何をどのように組み立てるかは、貴施設の規模・立地・客層・繁閑の形によって変わります。芸苑道では、次のような点を伺ったうえで、貴施設に合う形をご提案しております。

  • 問歴史ある建物や庭を、文化体験の場としてどう生かすか建物の様式や由来に合う演目と、音の響き方を踏まえた配置をご提案いたします。
  • 問建物を傷めずに、演奏の時間を設けられるか設営の規模や機材を最小限にした形を、現地の条件から率直にご相談いたします。
  • 問宿の物語を、お客様にどう伝えるか建物の歴史と曲の背景をつなぐ、ご紹介の言葉をご用意いたします。

ご状況を伺ったうえで、実施できる形かどうかを率直にお伝えいたします。芸苑道へご相談はこちら →

FAQよくある質問

韓国の「国家遺産ステイ」とは何ですか?

韓国の国家遺産庁が2026年9月に発表した事業で、歴史的な古宅を上質な宿泊と体験の拠点に整えるものです。スペインのパラドールを手本にした「韓国型パラドール」と位置づけられ、2027年に10か所程度を試行的に選びます。

どのような支援が行われますか?

国費は総額51億ウォンで、1か所あたり施設整備に約4億1千万ウォン、コンテンツの開発・運営に最大1億ウォンを支援します。国費と地方費は50対50です。統合ブランド、品質管理、統合予約、運営者の教育、共同マーケティングも一体で整えます。

どの建物が対象になりますか?

国や広域自治体(市・道)が指定(登録)した古宅・宗宅のうち、国・自治体が所有するもの、または公共に委託されているものが対象で、個人所有の建物は対象外です。自治体からの申請は2026年10月12日〜28日に受け付けます。

Sources & References出典・参考文献

  1. 韓国・国家遺産庁「国家遺産、滞在し楽しみ消費する新しい『活力拠点』へ」報道資料、2026年9月8日(大韓民国政策ブリーフィング掲載、韓国語) https://www.korea.kr/briefing/pressReleaseView.do?newsId=156780600
  2. The Korea Times「Turning historic houses into boutique hotels」2026年9月8日 https://www.koreatimes.co.kr/lifestyle/koreanheritage/20260908/turning-historic-houses-into-boutique-hotels

本記事は、公的機関・国際機関・学術論文などの公開情報をもとに作成しています(確認日:2026年10月10日)。数値や制度は改定されることがあるため、最新の情報は各出典の公式発表をご確認ください。

WRITTEN BY

細川 明日香

株式会社芸苑道 代表取締役。箏・三味線奏者。東京藝術大学 修士課程修了、日本当道会 師範。伝統芸能の実演家として、訪日のお客様に向けた文化体験を企画しております。著者プロフィール 個人サイト