The Studyどのような研究か?
中国・広西師範大学のFangzhou Liuらの研究チームは、2026年9月4日、学術誌『Sustainability』(MDPI、オープンアクセス)に論文を発表しました[1]。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 対象地 | 中国・桂林の歴史的建造物「靖江王府(Jingjiang Prince’s Mansion)」 |
| 調査方法 | 現地での質問紙調査(回収262票) |
| 分析方法 | 構造方程式モデリング(AMOS、SmartPLS) |
| 枠組み | 米国顧客満足度指数(ACSI)モデルを、文化観光向けに拡張 |
ACSIは、顧客の期待・品質の知覚・価値の知覚が満足度を決め、満足度が苦情やロイヤルティ(再購入・推奨)に影響するという考え方に立つ指標です。この研究では「品質」の代わりに「文化的な本物らしさ(cultural perceived authenticity)」を組み込み、文化観光の満足度がどのように生まれるかを検証しました[1]。本物らしさをめぐる理論の流れは、観光の「本物らしさ」は誰が決める?で整理しています。
Findings何が満足度と再訪につながったか?
期待→本物らしさ、本物らしさ→価値、満足→ロイヤルティの3つが特に強い関係でした(いずれもp<0.001)。
出典:Liu et al. (2026), Sustainability 18(17), 9092 をもとに作成
論文によると、9つの仮説のうち8つが支持されました[1]。要点は次のとおりです。
- 期待が出発点になる:訪れる前の文化的な期待が高いほど、本物らしさや価値を強く感じ、満足度も高くなりました。
- 本物らしさが価値を生む:建物の保存状態、暮らしの描写、文化の見せ方、感情の喚起を通じて感じる本物らしさが、文化的な価値の実感を大きく高めました。
- 満足が次の訪問につながる:満足度はロイヤルティ(体験の共有、推奨、再訪の意向)を最も強く高めました。
Limitationsこの研究を読むときの注意点は?
著者らは、研究の限界として次の点を挙げています[1]。
- 大規模な統計的一般化ではなく、仕組みの解明を目的として便宜的なサンプリングを採用しており、若く学歴の高い回答者の割合が高いこと
- 満足度とロイヤルティの相関が強く、調査で扱っていない要因も影響している可能性があること
対象は中国の一つの文化遺産で、回答者も主に国内の旅行者と考えられます。日本の宿泊施設で海外のお客様をお迎えする場面にそのまま当てはまるとは限らない点に留意が必要です。
そのうえで著者らは、実務への示唆として、①発信を通じて訪問者の文化的な期待を適切に導くこと、②文化財や会場の本物らしさを守り、体験の設計で感情的な共鳴や歴史・文化の奥行きを伝えること、を挙げています[1]。
Our Proposal芸苑道からの提案:体験は「始まる前」から
ここからは、芸苑道が宿泊施設の皆さまにお伝えしたい内容です。
1.期待を育てるご案内を
この研究では、事前の期待が本物らしさの感じ方と満足度の出発点になっていました。催しの数日前やチェックインの際に、演目の由来や楽器の背景を短くお伝えするだけでも、お客様の受け止め方は変わると私たちは考えています。
2.「本物らしさ」は細部に宿る
演目の選び方、装い、楽器、空間の設え、そして演奏家自身の言葉による解説——伝統の文脈を損なわない一つひとつの要素が、お客様の感じる本物らしさを形づくります。芸苑道では、実演家の視点からこれらを一貫して設計いたします。
3.満足の先にある再訪へ
満足度は再訪・推奨の意向と強く結びついていました。季節ごとに演目を変えるなど、「次に来たときの楽しみ」をご用意する方法があります。演目の選定・空間の設え・進行の設計まで、講師1名あたり¥88,000〜を目安にご相談を承っております。
Ask Us貴施設に置き換えると
ここまでは、公開されている資料にもとづく事実の整理です。実際に何をどのように組み立てるかは、貴施設の規模・立地・客層・繁閑の形によって変わります。芸苑道では、次のような点を伺ったうえで、貴施設に合う形をご提案しております。
- 問お客様の期待を、催しの前にどう高めればよいかご案内文や事前の解説など、体験の前段から構成をご提案いたします。
- 問「本物らしさ」は、館内の催しでどう伝わるか演目・装い・空間の設えを通じて、伝統の文脈を損なわない形をお伝えいたします。
- 問満足いただいたお客様に、再びお越しいただくには季節ごとに演目を変えるなど、再訪の楽しみにつながる企画のご相談を承っております。
ご状況を伺ったうえで、実施できる形かどうかを率直にお伝えいたします。芸苑道へご相談はこちら →
Glossaryこの記事に出てくる用語
| 用語 | 意味 |
|---|---|
| 文化観光ぶんかかんこう | 文化資源の観覧や、文化資源に関する体験活動などを通じて、文化についての理解を深めることを目的とする観光のこと。文化観光推進法(2020年施行)で使われている考え方です。 |
FAQよくある質問
この研究は何を調べたものですか?
中国・桂林の歴史的建造物を訪れた262人への調査から、文化的な期待・本物らしさ・価値の実感が満足度にどう影響し、満足度が再訪や推奨の意向にどうつながるかを分析したものです。
最も強い関係が見られたのはどこですか?
満足度からロイヤルティ(再訪・推奨の意向)への影響(β=0.726)が最も強く、次いで期待から本物らしさへの影響(β=0.672)でした。
結果は日本の宿泊施設にも当てはまりますか?
対象は中国の一つの文化遺産で、便宜的なサンプリングによる調査のため、そのまま当てはまるとは限りません。考え方の参考としてお読みください。
Sources & References出典・参考文献
- Liu, F., Dai, L., Li, G., Zhou, J., Liu, C., Zhou, Z., & Zhang, C. (2026). Cultural Tourism Experience and Tourist Satisfaction at a Heritage Site: An Extended ACSI Model. Sustainability, 18(17), 9092. https://doi.org/10.3390/su18179092
本記事は、公的機関・国際機関・学術論文などの公開情報をもとに作成しています(確認日:2026年10月2日)。数値や制度は改定されることがあるため、最新の情報は各出典の公式発表をご確認ください。
