The Study Group観光庁の料金設定研究会とは?
観光庁は2026年4月、「観光施設・サービス等の料金設定等に関する調査・研究会」を立ち上げました。座長は東京女子大学の矢ケ崎紀子教授で、4月27日から7月14日まで計4回の会合を開き、7つの自治体・施設からヒアリングを行いました[1][2]。
研究会は、料金設定は各施設の管理者やサービス提供者が主体的に判断するものという前提のもと、地域で議論する際の参考となる情報を提供することを目的としています[1]。ヒアリング結果のポイントは2026年7月28日に公表されました[3]。
報道などで話題になる「二重価格」(利用者の区分によって料金を変えること)も検討の対象に含まれますが、研究会の資料は、外国人かどうかだけでなく、市民と市民以外、時間帯、利用の目的など、さまざまな料金の設定方法を事例として扱っています[1]。
Two Roles of Pricing料金には、どんな役割があるのか
研究会の座長コメントは、料金の役割を次の二つに整理しています[1]。
- 過度の混雑を抑える手段:観光施設やサービスには、地域・環境・旅行者の体験価値を損なわずに受け入れられる水準(キャリング・キャパシティ)があり、これを超えると全体の満足度が下がる。
- 観光資源を守り、活用するための財源:観光資源を守り磨いていくことは、持続可能な観光地域づくりに欠かせない。
オーバーツーリズム対策としての国の方針はオーバーツーリズム対策パッケージで、入場制限や予約制の海外事例は入場制限と予約制で守るで紹介しています。
Seven Cases7つの事例では、何をどう変えたのか
タブを切り替えると、各事例の内容をご覧いただけます。いずれも研究会の「ヒアリング結果のポイント」の記載にもとづいています[1]。
縦覧料の改定と市民料金の導入(2026年3月1日)
- 18歳以上の市民は1,000円に据え置き、市民以外は1,000円から2,500円へ。18歳未満は無料に[1]。
- 今後10年間(2025〜2034年)の維持管理・保存整備・デジタル化などの事業費を約280億円と積算し、見込みの入城者数で割り戻して1人約2,500円と算出[1]。
- 当初は外国人と日本人で分ける料金も議論されましたが、議会や有識者の意見を踏まえ「市民/市民以外」の区分を採用[1]。
- 2026年3月の縦覧料収入(速報値)は約2.7億円で、前年から約1.3億円増。一方、3〜4月の入城者数(速報値)は約30万人で、前年比約15.8%減でした[1]。
山梨県による使用料の導入・引き上げ(2024年・2025年)
- 2024年7月に使用料2,000円(任意の保全協力金1,000円は別)を導入し、2025年7月に一本化して4,000円へ[1]。
- 1日あたりの登山者数の上限を原則4,000人とし、ゲートを閉める時間規制も実施[1]。
- 夜間に休まず山頂を目指す「弾丸登山者」は、2023年14,469人、2024年708人、2025年542人に減少[1]。
- 使用料収入として約6億円を確保し、維持管理・安全対策などの費用の89%を賄えるようになりました[1]。
村営駐車場の料金改定(2025年10月1日)
- 普通車は1,000円から2,000円、大型車(バス等)は3,000円から10,000円へ[1]。
- 宿泊税(日帰り客が中心で税収が限られる)や入域税(生活道路と観光動線が重なり徴収が難しい)も検討したうえで、駐車場料金の改定を選択[1]。
- 旅行会社のツアー企画期間を考慮し、条例改正から施行まで約半年の周知期間を確保[1]。
- 2025年度の収益は約4.8億円で、前年度(約2.5億円)の193.5%。増収分で駐車場の全面改修やトイレの建て直しを進めます[1]。
京都市交通局による観光特急バスの導入(2024年6月1日)
- 京都駅と東山エリアの観光地を結ぶ2路線で、停留所を観光地の最寄りに限定。運賃は一般系統の230円に対し500円[1]。
- 一般系統の混雑が改善し、停留所の待ち時間は最大で10〜15分程度に短縮。最大で1日約4,000人を輸送[1]。
- 京都市バス全体で約7割の系統が赤字のなか、観光特急バスは黒字を維持しています[1]。
シャトルバスの時間帯別運賃の実証実験(2025年12月〜2026年3月)
- 全時間帯500円だった運賃を、9〜11時800円、11〜14時500円、14〜18時1,000円に。予約制のプライオリティ・パス(500円)も導入[1]。
- マイカーの流入と交通支障は減った一方、14時以降の利用が多い状況は続き、時間帯別運賃による分散の効果は限定的でした[1]。
- 増収分でシャトルバスを1台増やし(2台から3台へ)、問い合わせ窓口も新設[1]。
入館料の改定(2020年4月1日)
- 一般620円から1,000円、大学生410円から500円へ。利用が1%程度だった団体料金は廃止[1]。
- 来館者1人あたりの直接的なランニングコストを踏まえて料金を設定し、改定の背景をホームページで複数回発信[1]。
- 増収分で、多言語の展示解説の充実や、新しい技術を使った体験型の展示などを実現[1]。
富士吉田市による駐車場の有料化(2025年4月1日)
- 来訪者は2016年の約31万人から2025年の約159万人に増え、渋滞や私有地への立ち入りなどが課題に[1]。
- 公園に近い駐車場は1,500円、遠い駐車場は1,000円とし、近い側を高くして渋滞の緩和をねらう設定[1]。
- 交通誘導などに必要な費用の約9割を、駐車場料金で概ね賄えるようになりました[1]。
白川郷の大型車(3.3倍)や姫路城の市民以外(2.5倍)など、改定の幅は事例によって大きく異なります。京都の観光特急バスは、一般系統の運賃(230円)との比較です。
出典:観光庁「観光施設・サービス等の料金設定等に関する調査・研究会 ヒアリング結果のポイント」(2026年7月)をもとに作成
Lessons on Process料金を見直すとき、どう進めたのか
研究会は、7事例に共通するポイントとして次の点を挙げています[1]。
- 必要経費から逆算する:今後の維持管理費や受け入れ環境の整備費を丁寧に見積もり、利用者アンケートも踏まえて料金を決めることで、納得を得やすい説明につなげている(姫路市・山梨県など)。
- 使い道を明確に伝える:施設の意義や目的とともに、得た収益をどう使うかを発信し、利用者の理解を得ている(白川村・東京国立博物館など)。
- 周知期間を確保する:導入時期から逆算して、条例改正から施行まで一定の期間を置いている(白川村・姫路市など)。
- 地域で体制をつくる:組織を横断した検討体制や、自治会・商工関係者への説明会を重ねている(富士吉田市など)。
- 実証実験で確かめる:効果の検証と、住民・観光客双方の理解を進めている(尾花沢市)。
一方で、ダイナミックプライシング(時間帯などによる料金の変動)による需要の分散については、狙いどおりの効果を明確に確認できた例はなく、引き続き調査・分析が必要としています[1]。研究会は今後も事例の収集と分析を続けるとしています[1]。
Our Proposal芸苑道からの提案:料金の「理由」を、体験でお伝えする
ここからは、芸苑道が宿泊施設の皆さまにお伝えしたい内容です。
1.何にお支払いいただくのかを、言葉に
研究会の事例では、料金の根拠と使い道をはっきり伝えた施設ほど、利用者の理解を得ていました。館内の文化体験も同じで、演目の由来、実演家の修練、楽器や装束の準備など、価格の背景を短くお伝えすることで、お客様の受け止め方は変わると私たちは考えています。
2.地域の文化を支える循環を
姫路城や白川郷のように、収益を文化財や受け入れ環境に還元する考え方は、宿泊施設の催しにも応用できます。地域の芸能や実演家と継続的に関わる形をつくることで、お客様に「この土地の文化を支える滞在」としてお伝えできます。
3.混雑とは別の時間に、静かな鑑賞を
観光地が混み合う時間帯を避け、早朝や夕食後に貴施設の中で鑑賞の時間をご用意する方法があります。演目の選定・空間の設え・進行の設計まで、講師1名あたり¥88,000〜を目安にご相談を承っております。
Ask Us貴施設に置き換えると
ここまでは、公開されている資料にもとづく事実の整理です。実際に何をどのように組み立てるかは、貴施設の規模・立地・客層・繁閑の形によって変わります。芸苑道では、次のような点を伺ったうえで、貴施設に合う形をご提案しております。
- 問体験の料金を、お客様に納得いただける形でどう示すか演目の内容と準備の手間をふまえ、料金の考え方を率直にお伝えいたします。
- 問文化体験の収益を、地域の文化にどう還元できるか地域の芸能や実演家と連携する形について、ご相談を承っております。
- 問混雑する時間帯を避けて、催しを組み立てるには貴施設の繁閑に合わせて、時間帯と規模を含めた進行をご提案いたします。
ご状況を伺ったうえで、実施できる形かどうかを率直にお伝えいたします。芸苑道へご相談はこちら →
Glossaryこの記事に出てくる用語
| 用語 | 意味 |
|---|---|
| オーバーツーリズムおーばーつーりずむ | 国連世界観光機関(UNWTO、現UN Tourism)は、観光が目的地やその一部に与える影響で、住民が感じる生活の質や、旅行者の体験の質を過度に悪化させる状態と定義しています(2018年の報告書)。 |
FAQよくある質問
この研究会は「二重価格」を推奨しているのですか?
推奨や義務づけではありません。料金設定は各施設の管理者が主体的に判断すべきものという前提で、地域での議論の参考となる事例を整理しています。
姫路城の料金はどう変わりましたか?
2026年3月1日から、18歳以上の市民は1,000円のまま、市民以外は2,500円になりました。18歳未満は無料です。
時間帯で料金を変える方法に効果はありましたか?
ヒアリングした事例の中では、ダイナミックプライシングによる需要分散の効果を明確に確認できた例はなく、引き続き調査・分析が必要とされています。
Sources & References出典・参考文献
- 観光庁「観光施設・サービス等の料金設定等に関する調査・研究会 ヒアリング結果のポイント」2026年7月 https://www.mlit.go.jp/kankocho/content/002013843.pdf
- 観光庁「観光施設・サービス等の料金設定等に関する調査・研究会」(開催概要・各回資料) https://www.mlit.go.jp/kankocho/page08_00012.html
- 観光庁 報道発表「観光施設・サービス等の料金設定等に関する調査・研究会『ヒアリング結果のポイント』公表について」2026年7月28日 https://www.mlit.go.jp/kankocho/news08_00047.html
本記事は、公的機関・国際機関・学術論文などの公開情報をもとに作成しています(確認日:2026年10月3日)。数値や制度は改定されることがあるため、最新の情報は各出典の公式発表をご確認ください。本記事は制度・事例の紹介であり、法的な助言ではありません。
