GEIENDO芸苑道
政策・制度ニュースHow Japan's Tourist Sites Set Their Prices

観光施設の料金、
7事例に学ぶ

公開 更新 文・細川明日香(株式会社芸苑道 代表)読了 約8分
観光施設の料金はどう決めるか——観光庁研究会が7事例のポイントを公表、姫路城・富士登山・白川郷
ANSWER

観光庁が2026年4月に立ち上げた「観光施設・サービス等の料金設定等に関する調査・研究会」は、2026年7月28日、姫路城・富士登山・白川郷など7事例のヒアリング結果のポイントを公表しました。料金には主に「過度な混雑を抑える手段」と「観光資源を守るための財源」という二つの役割があると整理し、必要経費から逆算して料金を決め、使い道を明確に伝えた事例が多いとしています。一方、時間帯で料金を変えるダイナミックプライシングによる需要の分散は、狙いどおりの効果を明確に確認できた例がなかったとも記しています。

このテーマの全体像はこちら第5次観光立国推進基本計画とは?2030年目標と文化観光に関わる施策

The Study Group観光庁の料金設定研究会とは?

観光庁は2026年4月、「観光施設・サービス等の料金設定等に関する調査・研究会」を立ち上げました。座長は東京女子大学の矢ケ崎紀子教授で、4月27日から7月14日まで計4回の会合を開き、7つの自治体・施設からヒアリングを行いました[1][2]。

研究会は、料金設定は各施設の管理者やサービス提供者が主体的に判断するものという前提のもと、地域で議論する際の参考となる情報を提供することを目的としています[1]。ヒアリング結果のポイントは2026年7月28日に公表されました[3]。

報道などで話題になる「二重価格」(利用者の区分によって料金を変えること)も検討の対象に含まれますが、研究会の資料は、外国人かどうかだけでなく、市民と市民以外、時間帯、利用の目的など、さまざまな料金の設定方法を事例として扱っています[1]。

Two Roles of Pricing料金には、どんな役割があるのか

研究会の座長コメントは、料金の役割を次の二つに整理しています[1]。

  1. 過度の混雑を抑える手段:観光施設やサービスには、地域・環境・旅行者の体験価値を損なわずに受け入れられる水準(キャリング・キャパシティ)があり、これを超えると全体の満足度が下がる。
  2. 観光資源を守り、活用するための財源:観光資源を守り磨いていくことは、持続可能な観光地域づくりに欠かせない。

オーバーツーリズム対策としての国の方針はオーバーツーリズム対策パッケージで、入場制限や予約制の海外事例は入場制限と予約制で守るで紹介しています。

Seven Cases7つの事例では、何をどう変えたのか

タブを切り替えると、各事例の内容をご覧いただけます。いずれも研究会の「ヒアリング結果のポイント」の記載にもとづいています[1]。

縦覧料の改定と市民料金の導入(2026年3月1日)

  • 18歳以上の市民は1,000円に据え置き、市民以外は1,000円から2,500円へ。18歳未満は無料に[1]。
  • 今後10年間(2025〜2034年)の維持管理・保存整備・デジタル化などの事業費を約280億円と積算し、見込みの入城者数で割り戻して1人約2,500円と算出[1]。
  • 当初は外国人と日本人で分ける料金も議論されましたが、議会や有識者の意見を踏まえ「市民/市民以外」の区分を採用[1]。
  • 2026年3月の縦覧料収入(速報値)は約2.7億円で、前年から約1.3億円増。一方、3〜4月の入城者数(速報値)は約30万人で、前年比約15.8%減でした[1]。
料金改定の幅と、富士登山の「弾丸登山者」数
  • 白川郷 大型車3,000円→10,000円
  • 姫路城 市民以外1,000円→2,500円
  • 京都 観光特急バス一般230円/特急500円
  • 富士登山 使用料2,000円→4,000円
  • 白川郷 普通車1,000円→2,000円
  • 東京国立博物館 一般620円→1,000円

白川郷の大型車(3.3倍)や姫路城の市民以外(2.5倍)など、改定の幅は事例によって大きく異なります。京都の観光特急バスは、一般系統の運賃(230円)との比較です。

出典:観光庁「観光施設・サービス等の料金設定等に関する調査・研究会 ヒアリング結果のポイント」(2026年7月)をもとに作成

Lessons on Process料金を見直すとき、どう進めたのか

研究会は、7事例に共通するポイントとして次の点を挙げています[1]。

  • 必要経費から逆算する:今後の維持管理費や受け入れ環境の整備費を丁寧に見積もり、利用者アンケートも踏まえて料金を決めることで、納得を得やすい説明につなげている(姫路市・山梨県など)。
  • 使い道を明確に伝える:施設の意義や目的とともに、得た収益をどう使うかを発信し、利用者の理解を得ている(白川村・東京国立博物館など)。
  • 周知期間を確保する:導入時期から逆算して、条例改正から施行まで一定の期間を置いている(白川村・姫路市など)。
  • 地域で体制をつくる:組織を横断した検討体制や、自治会・商工関係者への説明会を重ねている(富士吉田市など)。
  • 実証実験で確かめる:効果の検証と、住民・観光客双方の理解を進めている(尾花沢市)。

一方で、ダイナミックプライシング(時間帯などによる料金の変動)による需要の分散については、狙いどおりの効果を明確に確認できた例はなく、引き続き調査・分析が必要としています[1]。研究会は今後も事例の収集と分析を続けるとしています[1]。

Our Proposal芸苑道からの提案:料金の「理由」を、体験でお伝えする

ここからは、芸苑道が宿泊施設の皆さまにお伝えしたい内容です。

1.何にお支払いいただくのかを、言葉に

研究会の事例では、料金の根拠と使い道をはっきり伝えた施設ほど、利用者の理解を得ていました。館内の文化体験も同じで、演目の由来、実演家の修練、楽器や装束の準備など、価格の背景を短くお伝えすることで、お客様の受け止め方は変わると私たちは考えています。

2.地域の文化を支える循環を

姫路城や白川郷のように、収益を文化財や受け入れ環境に還元する考え方は、宿泊施設の催しにも応用できます。地域の芸能や実演家と継続的に関わる形をつくることで、お客様に「この土地の文化を支える滞在」としてお伝えできます。

3.混雑とは別の時間に、静かな鑑賞を

観光地が混み合う時間帯を避け、早朝や夕食後に貴施設の中で鑑賞の時間をご用意する方法があります。演目の選定・空間の設え・進行の設計まで、講師1名あたり¥88,000〜を目安にご相談を承っております。

Ask Us貴施設に置き換えると

ここまでは、公開されている資料にもとづく事実の整理です。実際に何をどのように組み立てるかは、貴施設の規模・立地・客層・繁閑の形によって変わります。芸苑道では、次のような点を伺ったうえで、貴施設に合う形をご提案しております。

  • 問体験の料金を、お客様に納得いただける形でどう示すか演目の内容と準備の手間をふまえ、料金の考え方を率直にお伝えいたします。
  • 問文化体験の収益を、地域の文化にどう還元できるか地域の芸能や実演家と連携する形について、ご相談を承っております。
  • 問混雑する時間帯を避けて、催しを組み立てるには貴施設の繁閑に合わせて、時間帯と規模を含めた進行をご提案いたします。

ご状況を伺ったうえで、実施できる形かどうかを率直にお伝えいたします。芸苑道へご相談はこちら →

Glossaryこの記事に出てくる用語

用語意味
オーバーツーリズムおーばーつーりずむ国連世界観光機関(UNWTO、現UN Tourism)は、観光が目的地やその一部に与える影響で、住民が感じる生活の質や、旅行者の体験の質を過度に悪化させる状態と定義しています(2018年の報告書)。
それぞれの語をクリックすると、出典つきの詳しい解説をご覧いただけます。

FAQよくある質問

この研究会は「二重価格」を推奨しているのですか?

推奨や義務づけではありません。料金設定は各施設の管理者が主体的に判断すべきものという前提で、地域での議論の参考となる事例を整理しています。

姫路城の料金はどう変わりましたか?

2026年3月1日から、18歳以上の市民は1,000円のまま、市民以外は2,500円になりました。18歳未満は無料です。

時間帯で料金を変える方法に効果はありましたか?

ヒアリングした事例の中では、ダイナミックプライシングによる需要分散の効果を明確に確認できた例はなく、引き続き調査・分析が必要とされています。

Sources & References出典・参考文献

  1. 観光庁「観光施設・サービス等の料金設定等に関する調査・研究会 ヒアリング結果のポイント」2026年7月 https://www.mlit.go.jp/kankocho/content/002013843.pdf
  2. 観光庁「観光施設・サービス等の料金設定等に関する調査・研究会」(開催概要・各回資料) https://www.mlit.go.jp/kankocho/page08_00012.html
  3. 観光庁 報道発表「観光施設・サービス等の料金設定等に関する調査・研究会『ヒアリング結果のポイント』公表について」2026年7月28日 https://www.mlit.go.jp/kankocho/news08_00047.html

本記事は、公的機関・国際機関・学術論文などの公開情報をもとに作成しています(確認日:2026年10月3日)。数値や制度は改定されることがあるため、最新の情報は各出典の公式発表をご確認ください。本記事は制度・事例の紹介であり、法的な助言ではありません。

WRITTEN BY

細川 明日香

株式会社芸苑道 代表取締役。箏・三味線奏者。東京藝術大学 修士課程修了、日本当道会 師範。伝統芸能の実演家として、訪日のお客様に向けた文化体験を企画しております。著者プロフィール 個人サイト