GEIENDO芸苑道
調査・研究レポートWhat Actually Improves Hotel Labour Productivity

宿泊業の労働生産性、
何が効くか

公開 更新 文・細川明日香(株式会社芸苑道 代表)読了 約7分
宿泊業の労働生産性、何が効くか——沖縄4ホテルの事例研究【学術論文】
ANSWER

関西学院大学の重谷陽一氏と名桜大学の角谷尚久氏による論文「観光業における労働生産性——沖縄県における宿泊業での事例研究」(『観光マネジメント・レビュー』Vol.2、2022年)は、沖縄県の4ホテルへのインタビューをもとに、労働生産性向上に関わる6つの仮説を検証しました。「資本労働比率の向上(設備投資)」と「離職率の抑制」の2つは、4ケースすべてで支持されました。

このテーマの全体像はこちら観光の「本物らしさ」は誰が決める?真正性研究の3つの理論【MacCannell・Cohen・Wang】

The Study沖縄4ホテルへのインタビュー調査

この論文は、沖縄県西海岸に立地するホテル4件へのインタビューをもとに、労働生産性を高める要因を、従業員のモチベーション以外の側面(オペレーション効率、マーケティング戦略)から検証したものです[1]。沖縄県を対象とした理由として、地理的に本土との陸路移動がなく統計の信頼性が高いこと、観光関連産業が最も主要な産業であることなどが挙げられています[1]。

背景として、2017年の宿泊業の有効求人倍率は6.15倍(全業種平均1.28倍)と雇用吸収力が高い一方、低賃金による離職率の高さが業界共通の課題として指摘されています[1]。

The Findings設備投資と離職率抑制は、4ケースすべてで支持

仮説検証結果(4ケース中)
資本労働比率の向上(設備投資)4ケースすべてで支持
離職率の抑制4ケースすべてで支持
格付とブランド3ケースで支持、1ケースで一部支持
需要波動と稼働率の差異4ケースすべてで不支持
チェーンオペレーション2ケースで支持、2ケースで不支持
リアルエージェントとの今後の関係3ケースで一部支持、1ケースで不支持
出典:重谷・角谷(2022)[1]

興味深いのは、「需要波動と稼働率の差異」という仮説が、4ケースすべてで不支持だったことです。あるケースでは、インバウンド需要をほとんど取り込めていなかったにもかかわらず、需要波動の影響を受けていませんでした。背景には、国内富裕層のファミリー向けヴィラを充実させるなど、独自の顧客層を確保する戦略があったと分析されています[1]。

Our Proposal芸苑道からの提案:離職率を下げる、もう一つの手段

ここからは、芸苑道が宿泊施設の皆さまにお伝えしたい内容です。

1.設備投資だけが「資本」ではない

この研究が支持した「資本労働比率の向上」は、大規模な改修だけを指すものではありません。館内の体験プログラムという、比較的小さな投資から始められる形もあります。

2.離職率と、従業員の誇り

研究が示すもう一つの重要な要因は離職率の抑制です。本物の伝統芸能を館内で提供していることは、従業員にとっても働く誇りにつながり得ます。

3.独自の顧客層が、波動に強くする

需要波動の影響を受けにくかったケースのように、独自の顧客層・独自の体験を持つことが、外部環境の変化に左右されにくい経営につながります。

Ask Us貴施設に置き換えると

ここまでは、公開されている資料にもとづく事実の整理です。実際に何をどのように組み立てるかは、貴施設の規模・立地・客層・繁閑の形によって変わります。芸苑道では、次のような点を伺ったうえで、貴施設に合う形をご提案しております。

  • 問設備投資を、どこから始めるべきか限られた予算の中で、優先順位をご一緒に整理します。
  • 問離職率を下げるために、体験企画は役立つか館内での文化体験が、従業員の誇りややりがいにつながった例も踏まえてご提案します。
  • 問この研究の知見を、貴施設にどう当てはめるか規模・立地に応じた読み替え方をご相談いただけます。

ご状況を伺ったうえで、実施できる形かどうかを率直にお伝えいたします。芸苑道へご相談はこちら →

FAQよくある質問

この論文はどこに掲載されましたか?

『観光マネジメント・レビュー』Vol.2(2022年)です。著者は重谷陽一氏(関西学院大学)と角谷尚久氏(名桜大学)です。

生産性向上に最も効くとされた要因は?

『資本労働比率の向上(設備投資)』と『離職率の抑制』の2つで、4ケースすべてで支持されました。

需要波動の影響を受けなかったホテルには、何がありましたか?

国内富裕層向けのファミリー向けヴィラを充実させるなど、独自の顧客層を確保する戦略があったとされています。

Sources & References出典・参考文献

  1. 重谷陽一、角谷尚久「観光業における労働生産性——沖縄県における宿泊業での事例研究」『観光マネジメント・レビュー』Vol.2(2022年) https://www.jstage.jst.go.jp/article/jptmrvone/2/0/2_12/_pdf/-char/ja

本記事は、公的機関・国際機関・学術論文などの公開情報をもとに作成しています(確認日:2026年9月25日)。数値や制度は改定されることがあるため、最新の情報は各出典の公式発表をご確認ください。

WRITTEN BY

細川 明日香

株式会社芸苑道 代表取締役。箏・三味線奏者。東京藝術大学 修士課程修了、日本当道会 師範。伝統芸能の実演家として、訪日のお客様に向けた文化体験を企画しております。著者プロフィール 個人サイト