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政策・制度ニュースJapan's Subsidy for Removing Derelict Hotels in Hot Spring Towns

温泉地の廃旅館を、
撤去・再生する支援

公開 更新 文・細川明日香(株式会社芸苑道 代表)読了 約7分
温泉地に残る廃旅館の撤去・再生を国が支援——観光庁「廃屋撤去・再生による地方温泉地等のまちづくり支援事業」、2026年度の採択4件と補助の仕組み
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観光庁は、地方の温泉地などに残る大規模な廃旅館・廃ホテルの撤去と、跡地での宿泊施設の再生を支援する「廃屋撤去・再生による地方温泉地等のまちづくり支援事業」の採択結果を公表しました。2026年10月7日時点の採択は4件(山口県長門市、福岡県北九州市、長野県上田市、栃木県那須郡)で、申請は2027年2月26日まで随時受け付けています。補助は、計画づくりの「1次支援」と、撤去・周辺事業の「2次支援」をあわせて最大6億円です。

このテーマの全体像はこちら第5次観光立国推進基本計画とは?2030年目標と文化観光に関わる施策

Overview「廃屋撤去・再生」の支援事業とは?

公募要領は、事業の背景を次のように説明しています。地方の温泉地や観光地では、高度経済成長期などの団体旅行向けに建てられた大規模なホテル等が、経営者の高齢化や後継者不足とあわせて廃業し、老朽化したまま放置されている例が見られる。こうした廃屋は、観光客の回遊や経済活動を妨げるだけでなく、高額な解体費用、複雑な権利関係、後継事業者の不在が重なり、民間だけでは解決が難しい、というものです[3]。

そこで本事業は、温泉地などの中心地に残る大規模な廃屋の撤去・減築費を補助し、官民一体で観光施設としての再生と、まち全体のにぎわいの再生をめざします[3]。めざす姿として、①廃屋の撤去・減築を契機とした再生、②周辺事業と連動した面的な再生、③関係人口・定住人口の増加による地域活性化への貢献、の三つが挙げられています[3]。

公募期間は2026年7月1日から2027年2月26日正午までで、申請があったものから随時、審査・採択が行われます。予算の上限に達した場合は受付を終了することがあります[1][5]。

Selected Projects2026年度は、どこが採択されたのか

観光庁が公表した採択一覧(2026年10月7日時点)は次の4件です[1][2]。

採択事業者実施地域
長門市山口県長門市
日鉄興和不動産株式会社福岡県北九州市
株式会社陣屋長野県上田市
GOOD SOIL株式会社栃木県那須郡

出典:観光庁「採択一覧(10月7日時点)」[2]。各事業の対象物件や計画の内容は、一覧には記載されていません。芸苑道と各事業者との提携関係はありません。

自治体と民間企業の両方が採択されている点が特徴です。今回の採択は、計画づくりを支援する1次支援の段階のものと考えられ、撤去や周辺事業への補助(2次支援)は、エリア再生計画の策定後に別途審査されます[3]。

How It Works何に、いくら補助されるのか

補助は2段階です。まず1次支援で「エリア再生計画」をつくり、そのうえで2次支援として廃屋の撤去・減築と周辺事業に補助が出ます。タブを切り替えると、それぞれの内容をご覧いただけます[3]。

  • 場所:地方の温泉地など、観光の中心地にあること。自治体の観光振興計画での位置づけ、周辺の観光資源や宿泊施設・商店の集まり、来訪の状況などから総合的に判断されます[3]。
  • 規模:延べ床面積がおおむね2,500㎡以上[3]。
  • 期間:建物の大部分の使用が止まってから、おおむね5年以上[3]。
  • 用途:問わない(観光施設でなくてもよい)[3]。
  • 自治体がすでに撤去した土地(おおむね5年以内、新しい宿泊施設等の竣工前)も、周辺事業費に限って対象になります[3]。
補助上限金額
1次・2次支援の合計6億円
うち周辺事業(廃屋の延べ床面積3,000㎡未満)1億円
うち周辺事業(3,000㎡以上5,000㎡未満)2億円
うち周辺事業(5,000㎡以上)3億円

出典:観光庁「令和8年度 廃屋撤去・再生による地方温泉地等のまちづくり支援事業(1次支援)公募要領」[3]

Key Points宿泊施設の立場から、押さえておきたい点は?

  • 建物だけでなく「エリア」の計画が前提:補助を受けるには、自治体が参加する協議会で「エリア再生計画」をつくる必要があります。協議会には、必要に応じて後継事業者、DMO、観光協会、地域金融機関、周辺事業者、地域住民などが加わることが求められています[3]。
  • 新しい施設は「廃屋と同等以下」の規模:跡地の宿泊施設等は、延べ床面積が廃屋と同等以下であることが2次支援の要件です[3]。大型施設の建て替えではなく、まちの規模に合った再生が想定されていると読めます。
  • 周辺の事業者も関わりうる:周辺事業は、新しい宿泊施設と相乗効果を生むものが対象で、計画の変更により後から追加することもできます[3]。
  • 事前相談が勧められている:対象になるかどうかは、申請前に事務局へ確認することが勧められています[3][4]。

宿泊施設が使える国の支援制度は宿泊施設が使える国の支援制度【2026年度】、観光地全体の再生事業の事例は観光地再生・高付加価値化事業、9つの優良事例で紹介しています。

Our Proposal芸苑道からの提案:まちの再生に、文化の時間を

ここからは、芸苑道が宿泊施設の皆さまにお伝えしたい内容です。

1.建物が変わる時期は、まちの物語を見直す時期

廃屋の撤去と再生は、温泉街の景観だけでなく、お客様にお伝えする「まちの物語」を見直す機会にもなります。その土地にゆかりのある芸能や季節の行事を、新しい施設や既存の宿でどうご紹介するかを、計画の段階から考えておく方法があります。

2.一軒の宿ではなく、温泉街として催しを

本事業は、周辺事業と連動した面的な再生をめざしています。複数の宿が合同で演奏会を開いたり、宿ごとに異なる演目をご用意して巡っていただいたりする形は、まち全体の滞在時間を延ばす試みとして検討に値すると私たちは考えています。

3.新しく開く施設には、設計の段階から

演奏に適した天井の高さや床の素材、客席の配置は、開業後に変えるのが難しい部分です。設計の段階からご相談いただければ、音の響きや動線についてお伝えいたします。演目の選定・空間の設え・進行の設計まで、講師1名あたり¥88,000〜を目安にご相談を承っております。

Ask Us貴施設に置き換えると

ここまでは、公開されている資料にもとづく事実の整理です。実際に何をどのように組み立てるかは、貴施設の規模・立地・客層・繁閑の形によって変わります。芸苑道では、次のような点を伺ったうえで、貴施設に合う形をご提案しております。

  • 問温泉街の再生に合わせて、貴施設の役割をどう描くかまち全体の催しの中で、貴施設が担える文化の時間をご提案いたします。
  • 問周辺の宿と連携した文化体験をつくれるか複数の施設を巡る形や、合同で開く催しの組み立てについて、ご相談を承っております。
  • 問新しく開く宿で、最初から文化体験を組み込むには空間の設計段階から、演奏に適した広さや音の響きについてお伝えいたします。

ご状況を伺ったうえで、実施できる形かどうかを率直にお伝えいたします。芸苑道へご相談はこちら →

Glossaryこの記事に出てくる用語

用語意味
観光地域づくり法人(DMO)かんこうちいきづくりほうじん観光庁の説明では、地域の「稼ぐ力」を引き出し、地域への誇りと愛着を育てる観光地域づくりの司令塔として、多様な関係者と協働しながら戦略を策定・実行する法人のこと。
それぞれの語をクリックすると、出典つきの詳しい解説をご覧いただけます。

FAQよくある質問

2026年度は何件採択されましたか?

2026年10月7日時点で4件です(山口県長門市、福岡県北九州市、長野県上田市、栃木県那須郡)。申請は2027年2月26日まで随時受け付けています。

補助の上限はいくらですか?

1次支援と2次支援の合計で6億円です。周辺事業への補助は、廃屋の延べ床面積に応じて1億〜3億円が上限です。

どのような廃屋が対象ですか?

地方の温泉地など観光の中心地にあり、延べ床面積がおおむね2,500㎡以上、使用停止からおおむね5年以上の廃屋です。用途は問いません。

Sources & References出典・参考文献

  1. 観光庁「令和8年度『廃屋撤去・再生による地方温泉地等のまちづくり支援事業』採択結果のお知らせ」2026年10月7日更新 https://www.mlit.go.jp/kankocho/kobo06_00090.html
  2. 観光庁「廃屋撤去・再生による地方温泉地等のまちづくり支援事業 採択事業者一覧(10月7日時点)」 https://www.mlit.go.jp/kankocho/content/002012043.pdf
  3. 観光庁「令和8年度 廃屋撤去・再生による地方温泉地等のまちづくり支援事業(1次支援)公募要領」 https://kanko-haioku.go.jp/assets/docs/R8_haioku_koboyoryo.pdf
  4. 廃屋撤去・再生による地方温泉地等のまちづくり支援事業 特設Webサイト(事務局) https://kanko-haioku.go.jp/
  5. 観光庁「令和8年度予算『廃屋撤去・再生による地方温泉地等のまちづくり支援事業』の事業者公募開始のお知らせ」2026年7月1日 https://www.mlit.go.jp/kankocho/kobo06_00072.html

本記事は、公的機関・国際機関・学術論文などの公開情報をもとに作成しています(確認日:2026年10月8日)。数値や制度は改定されることがあるため、最新の情報は各出典の公式発表をご確認ください。本記事は制度の紹介であり、法的な助言や補助の採否を判断するものではありません。申請にあたっては公募要領と事務局の案内をご確認ください。

WRITTEN BY

細川 明日香

株式会社芸苑道 代表取締役。箏・三味線奏者。東京藝術大学 修士課程修了、日本当道会 師範。伝統芸能の実演家として、訪日のお客様に向けた文化体験を企画しております。著者プロフィール 個人サイト