The Studyこの研究は、何を調べたのか
都市で働く人の多くは、仕事の要求の多さや慢性的な時間不足を抱えています。この研究は、そうした「忙しさ」が旅のペースの好みにどう影響し、さらに文化遺産を守る意欲につながるのかを調べたものです[1]。
- 対象:文化遺産を訪れたことのある、ベトナムの都市で働く旅行者799人
- 方法:アンケート調査のデータを、構造方程式モデリング(PLS-SEM)で分析
- 理論:資源保存理論、注意回復理論、人と環境の適合理論の三つを組み合わせて仮説を立てた
本記事は、論文の要旨(アブストラクト)にもとづいて内容を紹介しています。詳しい数値は原文をご確認ください[1]。
Key Findings忙しさから、文化遺産を守る意欲まで、どうつながっていたのか
研究が示した流れを、四つの段階に分けて紹介します。タブを切り替えてご覧ください[1]。
出発点:日常の忙しさ
研究は、都市で働く人が抱える仕事の要求の多さ、頭の疲れ、慢性的な時間不足を「忙しさ(busyness)」ととらえ、それが旅の好みにどう影響するかを調べました[1]。
あいだに入るもの:回復の欲求
忙しい人ほど、心身を回復させたいという欲求(need for recovery)が強くなり、それが旅のペースの好みにつながる、という流れを想定しました。分析の結果、回復の欲求は、忙しさと旅のペースの関係を部分的に媒介していました[1]。
結果:ゆっくりした旅を好む
忙しさは、ゆっくりしたペースの旅の好みと正の関係、速いペースの旅の好みと負の関係にありました[1]。
その先:歴史的建造物を守る意欲
回復の欲求は、文化遺産である建築を守ることへの意欲(conservation willingness)とも正の関係にありました。ただし、この関係は建築の特徴や美しさが高く評価される場合にだけ有意で、美しさのほうが影響を強める度合いが大きかったと報告されています[1]。
これらの関係は、性別・年齢・学歴・収入・旅行の頻度の影響を取り除いても、変わらず確認されたと報告されています[1]。
Implicationsこの結果は、何を意味するのか
著者は、実務への示唆として、旅行者を「忙しさ」で分けて考える市場の見方、ゆっくりした旅(スロー・ツーリズム)の商品づくり、文化遺産の管理の三つを挙げています[1]。回復を求めて訪れた人が文化遺産の支え手になるのは、建築の質が高い場合に限られるという結果は、建物や景観の美しさを保つことの意味を示しているとも読めます。
一方で、次の点には注意が必要です。
- 対象はベトナムの都市で働く旅行者で、日本を訪れる旅行者や富裕層のお客様にそのまま当てはまるとは限りません。
- アンケートにもとづく分析で、関係は示されていますが、因果を直接確かめたものではありません。
文化体験の満足度と「本物らしさ」の関係は文化体験の満足度は何で決まるかで、旅ごとに楽しみ方が変わることを示した研究は2回目の訪日で、楽しみ方は変わるのかで紹介しています。
Our Proposal芸苑道からの提案:多忙なお客様に、回復の時間を
ここからは、芸苑道が宿泊施設の皆さまにお伝えしたい内容です。
1.予定を詰め込まない、鑑賞の時間を
研究では、忙しい人ほどゆっくりした旅を好む傾向が示されました。貴施設を訪れるお客様の多くも、日頃から多忙な方々です。観光の予定とは別に、館内で静かに演奏をお聴きいただく時間は、回復を求めるお客様の旅の目的に沿うものだと私たちは考えています。
2.建物と庭の美しさを、舞台に
回復の欲求が文化遺産を守る意欲につながるのは、建築の美しさが高く評価される場合でした。歴史ある建物や庭をおもちの施設では、その空間を生かした演奏の場をご用意することで、空間の価値をお客様に改めて感じていただけます。
3.短い時間でも、深く
滞在が短いお客様にも、到着後のひとときや朝の時間に、15〜30分ほどの演奏をお届けする形があります。演目の選定・空間の設え・進行の設計まで、講師1名あたり¥88,000〜を目安にご相談を承っております。
Ask Us貴施設に置き換えると
ここまでは、公開されている資料にもとづく事実の整理です。実際に何をどのように組み立てるかは、貴施設の規模・立地・客層・繁閑の形によって変わります。芸苑道では、次のような点を伺ったうえで、貴施設に合う形をご提案しております。
- 問多忙なお客様に、ゆっくり過ごしていただく時間をどうつくるか滞在の流れの中に、静かに鑑賞する時間を無理なく組み込む方法をご提案いたします。
- 問建物や庭の美しさを、文化体験とどう結びつけるか貴施設の空間の特徴を生かした演奏の場所と時間をお伝えいたします。
- 問短い滞在でも、回復を感じていただけるか到着後や朝の短い時間に合わせた、負担の少ない催しのご相談を承っております。
ご状況を伺ったうえで、実施できる形かどうかを率直にお伝えいたします。芸苑道へご相談はこちら →
FAQよくある質問
この研究は何を調べたものですか?
文化遺産を訪れたベトナムの都市で働く旅行者799人を対象に、忙しさが旅のペースの好みや文化遺産を守る意欲にどう関係するかを調べたものです。
忙しい人は、どんな旅を好む傾向がありましたか?
ゆっくりしたペースの旅を好み、速いペースの旅を好まない傾向がありました。心身を回復させたいという欲求が、この関係を部分的に説明していました。
結果は日本の宿泊施設のお客様にも当てはまりますか?
対象はベトナムの旅行者で、アンケートにもとづく分析のため、そのまま当てはまるとは限りません。考え方の参考としてお読みください。
Sources & References出典・参考文献
- Bui Thanh Khoa (2026). Too busy to rush: Recovery needs, travel pace, and heritage conservation willingness. Tourism and Hospitality Research. Published online 10 September 2026. https://doi.org/10.1177/14673584261488625
本記事は、公的機関・国際機関・学術論文などの公開情報をもとに作成しています(確認日:2026年10月8日)。数値や制度は改定されることがあるため、最新の情報は各出典の公式発表をご確認ください。
