GEIENDO芸苑道
調査・研究レポートDo Repeat Visitors to Japan Seek the Same Experiences?

2回目の訪日で、
楽しみ方は変わるのか

公開 更新 文・細川明日香(株式会社芸苑道 代表)読了 約7分
2回目の訪日で、楽しみ方は変わるのか——米国からのリピーター2,341人の口コミを分析した2026年の研究【学術論文】
ANSWER

2026年9月29日に学術誌Current Issues in Tourismに掲載された研究(Yuki Okano)は、Tripadvisorの口コミから、米国から日本を2回以上訪れた2,341人の旅を分析しました。1回目と2回目で同じタイプの体験をしていた人は33.2%にとどまり、約3分の2は2回目に違うタイプの体験をしていました。2回目は名所めぐりが減り、自然やウェルネスが増えています。著者は、過去の旅の傾向だけに頼って体験を勧めることには注意が必要で、その旅ごとの目的に合わせた提案が有効になりうると述べています。

このテーマの全体像はこちら観光の「本物らしさ」は誰が決める?真正性研究の3つの理論【MacCannell・Cohen・Wang】

The Studyこの研究は、何を調べたのか

旅行者がどんな体験を好むかは、行き先を選ぶ大きな理由の一つです。これまでの研究では、こうした好みは比較的安定しているとする見方がありましたが、仮想の質問への回答や、過去の旅の記憶にもとづく調査が中心でした[1]。

この研究は、実際の行動を記録したデータとしてTripadvisorの英語の口コミを使い、同じ人の1回目と2回目の訪日旅行で、体験のタイプが同じかどうかを比べました[1]。対象を米国の旅行者にしたのは、主要な送り出し国であることに加え、2019年には米国からの訪日客の33.6%がリピーターだったためと説明されています[1]。

  • 2022年10月〜2023年1月に、日本の観光スポット19,958か所の口コミ510,946件(投稿者140,338人)を収集
  • 新型コロナの影響を除くため、2019年12月までの体験に限定
  • 米国在住で2回以上の旅が確認できた2,341人・4,682回の旅・15,002件の口コミを分析(旅は2010年3月〜2019年12月)
  • 訪れたスポットの種類から、旅を10のタイプに分類

「1回目」は口コミで確認できた最も古い旅を指し、実際の初訪日とは限りません[1]。

Key Findings1回目と2回目で、体験のタイプはどれくらい一致したのか

1回目と2回目で体験のタイプが一致した割合(タイプ別)
  • 全体33.2%
  • 名所45.1%
  • 自然31.8%
  • 体験教室・食24.1%
  • 博物館・美術館22.0%
  • 買い物21.7%
  • ウェルネス(温泉・スパ)14.5%
  • テーマパーク14.0%
  • エンターテインメント13.9%
  • 公演(コンサート・ショー)3.3%
  • イベント0%

全体の一致率は33.2%でした。最も高い「名所」でも45.1%で、「公演(コンサート・ショー)」は3.3%、「イベント」は0%でした。

出典:Okano, Y. (2026). Current Issues in Tourism(Table 2)をもとに作成。タイプ名は芸苑道による訳です

研究の主な結果は次のとおりです[1]。

  • 約3分の2が、2回目に違うタイプの体験をしていた:全体の一致率は33.2%でした。1回目と2回目の間隔の長さは、一致するかどうかと関係が見られませんでした。
  • 2回目は名所が減り、自然とウェルネスが増えた:タイプを変えた人の45.4%は、「名所」「自然」「博物館・美術館」の3タイプの間で移っていました。
  • 1回目のタイプは、2回目のタイプをほとんど左右しない:タイプが変わった人では、1回目に何をしたかと2回目に何をするかの関係は、おおむね見られませんでした。
  • 例外的な動き:「公演・イベント」から「ウェルネス」へ移る人、「自然」から「テーマパーク」へ移る人は、統計的に想定より多くなりました。反対に、「名所」から「エンターテインメント」や「ウェルネス」へ移る人は想定より少なくなりました。

Implicationsこの結果は、何を意味するのか

著者は、体験の好みは固定されたものではなく、その旅の目的や状況に応じてつくられると考えるほうが結果に合う、と述べています。たとえば、くつろぎを求める旅では自然を、知的な好奇心が強い旅では博物館を選ぶ、といった違いです[1]。

実務への示唆として、観光地や旅行会社は、旅行者の過去の体験に頼りすぎて勧めると、機会を逃したり満足度を下げたりするおそれがあり、その旅ごとの要望を理解して提案するほうが有効になりうるとしています[1]。

一方、著者は次のような限界も挙げています[1]。

  • Tripadvisorの利用者に限られ、すべての体験が口コミされているわけではないこと
  • 比較は2回の旅に限られ、年齢などの属性は分析できていないこと
  • 対象は米国からの訪日客のみで、ほかの国・地域には当てはまらない可能性があること

訪日リピーターの規模は訪日リピーターは2,768万人で、観光庁の分析は何度目かで行き先が変わるで紹介しています。

Our Proposal芸苑道からの提案:「前回と同じ」ではなく「今回のために」

ここからは、芸苑道が宿泊施設の皆さまにお伝えしたい内容です。

1.ご予約の際に、旅の目的を伺う

研究では、同じ方でも旅ごとに楽しみ方が変わっていました。再訪のお客様にも、前回のご記録だけでなく「今回はどのようにお過ごしになりたいか」を伺うことで、ご案内する体験の幅が広がると私たちは考えています。

2.温泉・スパと、鑑賞のひとときを

公演やイベントを楽しんだ方が、次の旅でウェルネスを選ぶ動きが想定より多く見られました。くつろぎを求めるお客様には、湯上がりの時間に合わせた短い演奏など、静かに楽しめる形をご提案いたします。

3.初めての方と、再訪の方で演目を変える

1回目は名所めぐりが中心でも、2回目には別の楽しみを探す方が多くいらっしゃいます。初めての方には分かりやすい代表的な演目を、再訪の方には季節や土地にちなんだ演目を、と分けてご用意する方法があります。演目の選定・空間の設え・進行の設計まで、講師1名あたり¥88,000〜を目安にご相談を承っております。

Ask Us貴施設に置き換えると

ここまでは、公開されている資料にもとづく事実の整理です。実際に何をどのように組み立てるかは、貴施設の規模・立地・客層・繁閑の形によって変わります。芸苑道では、次のような点を伺ったうえで、貴施設に合う形をご提案しております。

  • 問2回目のお客様に、前回と同じご案内をしてよいかご予約時の伺い方を含め、旅の目的に合わせた体験の選び方をご提案いたします。
  • 問温泉やスパと、文化体験をどう組み合わせるかくつろぎの時間を妨げない演目の長さと時間帯をお伝えいたします。
  • 問米国のお客様に、どんな伝統芸能が伝わりやすいか解説の言語と内容を含めて、貴施設の客層に合わせてご相談を承っております。

ご状況を伺ったうえで、実施できる形かどうかを率直にお伝えいたします。芸苑道へご相談はこちら →

FAQよくある質問

この研究は何を調べたものですか?

米国から日本を2回以上訪れた2,341人のTripadvisorの口コミから、1回目と2回目の訪日旅行で体験のタイプが同じかどうかを比べたものです。

どれくらいの人が、同じタイプの体験をしていましたか?

全体の33.2%でした。約3分の2の人は、2回目に違うタイプの体験をしていました。

結果はすべての訪日客に当てはまりますか?

対象は米国からの訪日客で、Tripadvisorの利用者に限られるため、そのまま当てはまるとは限りません。考え方の参考としてお読みください。

Sources & References出典・参考文献

  1. Okano, Y. (2026). Stability of preferences for types of tourism experiences: evidence from online reviews by repeat visitors to Japan. Current Issues in Tourism. Published online 29 September 2026. https://doi.org/10.1080/13683500.2026.2740588

本記事は、公的機関・国際機関・学術論文などの公開情報をもとに作成しています(確認日:2026年10月3日)。数値や制度は改定されることがあるため、最新の情報は各出典の公式発表をご確認ください。

WRITTEN BY

細川 明日香

株式会社芸苑道 代表取締役。箏・三味線奏者。東京藝術大学 修士課程修了、日本当道会 師範。伝統芸能の実演家として、訪日のお客様に向けた文化体験を企画しております。著者プロフィール 個人サイト