GEIENDO芸苑道
調査・研究レポートPenalty–Reward Asymmetry in Luxury Hotel Reviews

高級ホテルの口コミ、
不満は満足より重い

公開 更新 文・細川明日香(株式会社芸苑道 代表)読了 約7分
高級ホテルの口コミでは、不満の影響が満足より大きい——11の旅行先・75軒の12,018件を分析した2026年の研究、接客で差が最も大きく【学術論文】
ANSWER

2026年9月28日に学術誌Tourism and Hospitalityに掲載された研究(Ahmadほか)は、日本を含む11の旅行先の高級ホテル75軒について、Booking.comとTripadvisorの英語の口コミ12,018件を分析しました。その結果、調べたすべての項目で、不満を書かれたときに評価が下がる幅が、満足を書かれたときに上がる幅より大きいことが示されました。差が最も大きかったのは、十分なデータのある項目の中では「スタッフと接客」です。一方、旅行先によってこの差が変わるかどうかは、まだはっきりしないと著者は慎重に述べています。

このテーマの全体像はこちら観光の「本物らしさ」は誰が決める?真正性研究の3つの理論【MacCannell・Cohen・Wang】

The Studyこの研究は、何を調べたのか

顧客満足の研究では、ある項目の「悪い出来」が満足を下げる影響は、同じ程度の「良い出来」が満足を上げる影響より大きい、という非対称性が知られています。この研究は、高級ホテルの口コミでもこの非対称性が見られるか、さらに旅行先によってその度合いが変わるのかを調べたものです[1]。

項目内容
対象11の旅行先(日本を含む)の高級ホテル75軒[1]
データBooking.comとTripadvisorの口コミ22,144件のうち、英語の12,018件を分析[1]
収集時期2026年8月下旬〜9月上旬[1]
ホテルの選び方Condé Nast TravelerやRobb Reportなどの業界ランキングをもとに、旅行先ごとに高級ホテルの候補を選定[1]
分析の方法口コミの文をキーワードで項目に振り分け、感情を判定する辞書型のツール(VADER)で肯定・否定を判定。評価は5段階にそろえて比較[1]
掲載Tourism and Hospitality 7巻10号 論文番号318(2026年9月28日公開、オープンアクセス)[1]

Key Findingsどの項目で、不満の影響が大きかったのか

研究は、口コミで項目に触れていない人の平均評価を基準に、その項目を「良い」とだけ書いた人と「悪い」とだけ書いた人の平均評価がどれだけ違うかを比べました。すると、すべての項目で、不満の記述による評価の下がり幅が、満足の記述による上がり幅を上回りました[1]。ボタンを切り替えると、差の大きさと、項目ごとの言及の多さをご覧いただけます。

高級ホテルの口コミにおける「不満の重さ」
  • スタッフと接客1.29
  • 機能面5項目の平均0.93
  • 設備・施設0.61

数値は5段階評価での差(絶対値)です。「スタッフと接客」は、十分なデータのある項目の中で最も差が大きく、客室や設備などの機能面5項目の平均(0.93)を上回りました。

出典:Ahmad, Michael & Abdullah (2026), Tourism and Hospitality 7(10), 318 をもとに作成

  • スタッフと接客:最も多く書かれた項目(8,306件)で、差は−1.29。客室・飲食・立地・設備・価格などの機能面5項目の平均(0.93)より大きく、統計的な検定でも機能面との差(−0.39)が確認されました[1]。
  • 設備・施設:差が最も小さい項目(−0.61)でした[1]。
  • 価格に見合う価値:「価格に見合っていた」と良く書いた口コミでも、平均評価が基準を下回りました(−0.28)。著者は、価格にわざわざ触れる人は、もともと価格に敏感な立場から書いている可能性を挙げています[1]。
  • 特別感:差は−1.43と最大でしたが、不満の記述は34件と少なく、参考程度とされています[1]。

Caveatsこの結果は、どこまで言えるのか

著者は、結果の読み方について慎重な姿勢をとっています。

  • 旅行先による違いは未確定:通常の検定では6項目中4項目で旅行先による差が見られましたが、ホテルごとの違いを考慮した分析では「価格に見合う価値」と「設備・施設」の2項目にとどまりました。著者は、旅行先そのものの効果が確かめられたわけではなく、予備的な証拠にとどまるとしています[1]。
  • 自動判定の精度:人の判定と比べると、自動の判定は不満の記述の57%しか拾えていませんでした[1]。
  • データの範囲:英語の口コミのみで、書き手の国籍は分析していません。旅行先ごとのホテル数も3〜10軒とばらつきがあります[1]。

旅行先ごとの違いについては今後の研究を待つ必要がありますが、「不満の影響は満足より大きい」という点は、人による判定でも確認されたと報告されています[1]。施設タイプ別の稼働率の動きは施設タイプ別の客室稼働率【2025年】で、文化体験の満足度の研究は文化体験の満足度は何で決まるかで紹介しています。

Our Proposal芸苑道からの提案:文化体験こそ、「不満を生まない設計」を

ここからは、芸苑道が宿泊施設の皆さまにお伝えしたい内容です。

1.催しの「当たり前」を確実に

研究では、不満の記述が評価に与える影響の大きさが示されました。館内の文化体験も同じで、開始時刻の遅れ、音の聞こえにくさ、座席の分かりにくさといった小さなつまずきは、演奏の良さ以上に記憶に残るおそれがあります。芸苑道では、演奏そのものだけでなく、進行・音の響き・お席の配置まで事前に確認いたします。

2.スタッフの方が語る、ひとこと

接客は、評価への影響が最も大きい項目でした。演奏の前にスタッフの方から演目をご紹介いただくなど、人を介したおもてなしの中に文化体験を組み込む形もございます。ご紹介の言葉は、芸苑道でご用意いたします。

3.言葉にしやすい体験に

「特別感」や「個別の配慮」は、口コミに言葉としてはほとんど書かれていませんでした。体験に分かりやすい名前を付け、短い解説を添えることで、お客様が旅の思い出を言葉にしやすくなると私たちは考えています。演目の選定・空間の設え・進行の設計まで、講師1名あたり¥88,000〜を目安にご相談を承っております。

Ask Us貴施設に置き換えると

ここまでは、公開されている資料にもとづく事実の整理です。実際に何をどのように組み立てるかは、貴施設の規模・立地・客層・繁閑の形によって変わります。芸苑道では、次のような点を伺ったうえで、貴施設に合う形をご提案しております。

  • 問満足を上乗せするより、不満を生まないために何を整えるべきか催しの進行や準備で、お客様の期待を損なわないための確認点をお伝えいたします。
  • 問スタッフの接客と、文化体験をどう結びつけるかスタッフの方が演目を紹介する場面など、人を介した演出をご提案いたします。
  • 問口コミに書いていただきやすい体験とは何か体験の名前や短い解説など、お客様が言葉にしやすい形のご相談を承っております。

ご状況を伺ったうえで、実施できる形かどうかを率直にお伝えいたします。芸苑道へご相談はこちら →

FAQよくある質問

この研究は何を調べたものですか?

日本を含む11の旅行先の高級ホテル75軒について、英語の口コミ12,018件を分析し、不満と満足の記述が評価に与える影響の違いと、その違いが旅行先によって変わるかを調べたものです。

どの項目で不満の影響が大きかったのですか?

すべての項目で、不満の記述による評価の下がり幅が満足による上がり幅を上回りました。十分なデータのある項目では、スタッフと接客の差が最も大きくなりました。

旅行先によって結果は変わりますか?

通常の検定では一部の項目で差が見られましたが、ホテルごとの違いを考慮すると多くは確認できず、著者は予備的な結果にとどまるとしています。

Sources & References出典・参考文献

  1. Ahmad, I., Michael, L., & Abdullah, S. (2026). Destination as a Boundary Condition on Penalty–Reward Asymmetry in Luxury Hotel Guest Satisfaction. Tourism and Hospitality, 7(10), 318. Published 28 September 2026. https://doi.org/10.3390/tourhosp7100318

本記事は、公的機関・国際機関・学術論文などの公開情報をもとに作成しています(確認日:2026年10月9日)。数値や制度は改定されることがあるため、最新の情報は各出典の公式発表をご確認ください。

WRITTEN BY

細川 明日香

株式会社芸苑道 代表取締役。箏・三味線奏者。東京藝術大学 修士課程修了、日本当道会 師範。伝統芸能の実演家として、訪日のお客様に向けた文化体験を企画しております。著者プロフィール 個人サイト