The Studyこの研究は、何を調べたのか
祭礼のような無形の文化遺産が観光に取り込まれると、地域の行事は、観光客に向けて組織され、見せられ、解説されるものにもなります。この研究は、中国・湄洲島の媽祖の春の祭礼(媽祖春祭)を例に、観光化の中で祭礼の継承を誰がどう担っているのか、そして観光客がそれをどう受け止めたかを調べたものです[1]。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 著者 | Yizhu Wang、Keisuke Matsui(筑波大学)[1] |
| 対象 | 中国福建省莆田市の湄洲島で行われる媽祖春祭[1] |
| 方法 | 半構造化インタビュー、非参与観察、文書分析を組み合わせた質的な事例研究[1] |
| 調査時期 | 2021年9月3〜11日、2024年3月15〜23日[1] |
| 聞き取りの対象 | 計38人(寺院理事会の関係者7人、住民14人、大学生の演者9人、祭礼に参加したことのある観光客8人)[1] |
| 掲載 | Tourism and Hospitality 7巻9号 論文番号312(2026年9月19日公開、オープンアクセス)[1] |
湄洲島は媽祖信仰の発祥の地とされ、「媽祖信仰と習俗」は2009年にユネスコ無形文化遺産の代表一覧表に記載されています。島の観光客数は2019年に688万人と新型コロナ前の最高に達し、2025年末時点で島にはホテル13軒と民宿693軒があったと論文は記しています[1]。
How the Ceremony Changed祭礼は、観光の中でどう変わってきたのか
論文は、現代の祭礼の歩みを三つの段階に分けています[1]。
- 1994〜1999年(復興と初期の形成):寺院の理事会が文献調査や他地域の祭祀の視察をもとに儀礼を再構成し、音楽と舞を取り入れました。演者は主に若い教員、学生、島の住民でした。
- 2000〜2010年(拡大と制度化):2000年に改訂版が導入され、地元の芸能である莆仙戯などの要素が加わりました。2002年には新しく造られた広場に会場が移っています。
- 2011年以降(大学生が主な演者に):寺院理事会と近隣の大学の連携で、大学生を組織的に募集・訓練する仕組みが導入されました。2014年の改訂後には、観客のための観覧エリアも設けられています。
寺院理事会・住民・大学生の演者の30人が分析の中心で、観光客8人は探索的な補足として扱われています。
出典:Wang & Matsui (2026), Tourism and Hospitality 7(9), 312 をもとに作成
Key Findings誰が、どのように祭礼を支えていたのか
研究は、立場の異なる人々が、それぞれ違う形で祭礼を支えていることを示しました[1]。
- 寺院の理事会:祭礼の計画、儀礼の手順の標準化、公式な発信を担っていました。儀礼の手順を決める権限と、公式の「語り」を定める権限は、理事会に集中していたとされます。
- 地元の住民:祭礼を日々の暮らしや地域の生活と結びつけ、土地に根ざした意味を、日常のやりとりの中で伝えていました。
- 大学生の演者:訓練を受けて大規模な上演を支えていました。一方で、関わりは訓練と上演を中心とした短期のもので、卒業後も続くとは限らないとされています。
- 観光客:祭礼を「厳か」「神聖」「にぎやか」「感動的」などと受け止めていました。ただし、具体的な文化や信仰の理解は、事前の宗教的な知識があるか、地元の人の説明を聞いたかどうかと結びついていました。
論文は、観光客の例として、民宿の主人から昔の祭礼で守られていた決まりごとを教わった人や、寺院近くの食堂の主人から石段の彫刻に描かれた伝説を聞いた人の話を紹介しています。また、自分が参加したことのある催しだけを友人に勧めるという観光客の声も記録されています[1]。
著者は、観光客への聞き取りは8人の回想にもとづく探索的なものであり、祭礼の当日を直接観察していないことなどを、研究の限界として挙げています[1]。観光の「本物らしさ」をめぐる研究の流れは真正性研究の3つの理論で紹介しています。
Our Proposal芸苑道からの提案:「聴いた」を「わかった」に変える、ひとこと
ここからは、芸苑道が宿泊施設の皆さまにお伝えしたい内容です。
1.感動と理解は、別のもの
研究では、観光客は祭礼に心を動かされていても、具体的な意味の理解は、地元の人の説明を聞けたかどうかで差がありました。館内の演奏でも、音色の美しさは誰にでも届きますが、曲の情景や楽器の由来は、ひとことの解説があって初めて伝わります。芸苑道では、演奏の合間に短い解説を添える構成をご提案いたします。
2.宿の方の語りは、文化の入口
研究で紹介されていたのは、民宿や食堂の主人の説明でした。お客様にとって、宿の方から聞く話は、ガイドブックとは違う重みを持ちます。スタッフの方が演目を紹介しやすいよう、短いご紹介の言葉を芸苑道でご用意いたします。
3.担い手の顔が見える演奏を
研究は、上演を支える人と、意味を語る人が分かれている姿も示していました。芸苑道の演奏では、実演家自身が曲や楽器についてお話しすることもできます。演じる人の言葉で伝えることも、本物の文化に触れる体験の一部だと私たちは考えています。演目の選定・空間の設え・進行の設計まで、講師1名あたり¥88,000〜を目安にご相談を承っております。
Ask Us貴施設に置き換えると
ここまでは、公開されている資料にもとづく事実の整理です。実際に何をどのように組み立てるかは、貴施設の規模・立地・客層・繁閑の形によって変わります。芸苑道では、次のような点を伺ったうえで、貴施設に合う形をご提案しております。
- 問演奏を聴いたお客様に、意味まで伝わっているか演目の背景を短く添える解説の形をご提案いたします。
- 問スタッフの方のひとことを、文化の案内に生かせるかスタッフの方がお客様にお伝えしやすい、演目紹介の言葉をご用意いたします。
- 問地域の芸能や行事と、貴施設をどうつなぐか土地にゆかりのある芸能の選び方や、ご紹介の仕方についてご相談を承っております。
ご状況を伺ったうえで、実施できる形かどうかを率直にお伝えいたします。芸苑道へご相談はこちら →
Glossaryこの記事に出てくる用語
FAQよくある質問
この研究は何を調べたものですか?
中国・湄洲島の媽祖春祭を対象に、観光化した祭礼の継承を寺院理事会・住民・大学生の演者がどう担っているか、また観光客がどう受け止めたかを、38人への聞き取りなどから調べた質的な事例研究です。
観光客の理解は何によって深まっていましたか?
観光客は祭礼を厳か・感動的などと受け止めていましたが、具体的な文化の理解は、事前の宗教的な知識か、民宿や食堂の主人など地元の人の説明と結びついていたと報告されています。
この結果はどこまで一般化できますか?
著者は、一つの事例にもとづく研究であり、観光客への聞き取りは8人の探索的なものだとしています。他の地域に当てはまるかは、それぞれの状況に応じて検討する必要があるとしています。
Sources & References出典・参考文献
- Wang, Y., & Matsui, K. (2026). Heritage Transmission and Multi-Actor Participation in the Mazu Spring Sacrificial Ceremony Under Tourismization: A Case Study of Meizhou Island, China. Tourism and Hospitality, 7(9), 312. Published 19 September 2026. https://doi.org/10.3390/tourhosp7090312
本記事は、公的機関・国際機関・学術論文などの公開情報をもとに作成しています(確認日:2026年10月9日)。数値や制度は改定されることがあるため、最新の情報は各出典の公式発表をご確認ください。
